業務委託の契約書でどこを見ているか|見る順番と、過去に困ったところ

業務委託の契約書でどこを見ているか|見る順番と、過去に困ったところ 副業

この記事では、私が業務委託の契約書を受け取ったときにどこを、どの順番で見ているかを書きます。法律の解説ではなく、実際に契約して働いている人間が、目を通す順番と、過去に自分が困ったところをそのまま出す形です。

書いているのは、さとりといいます。元は調理師で、飲食の現場に10年いました。そこからSNS運用代行のフリーランスとして独立して、いまは業務委託の仕事と自社の事業を並行して動かしています。営業が苦手で、その苦手を埋めるために自動化を作り始めた在宅ワーカーです。

先に結論を書きます。私が契約書で最初に見るのは、金額でも期間でもなく「何をどこまでやるか」と「いつ払われるか」の2か所です。この2つが曖昧なままだと、後から起きるトラブルはほぼ全部ここに戻ってきます。逆にここさえ具体的なら、多少読みにくい契約書でも、私はだいたい進めています。

なお、以下は法律の助言ではありません。私が自分の判断でやっていることと、実際に困った話です。金額の大きい契約や、読んでも意味が取れない条項があるときは、専門家に確認してください。

私が契約書を見る順番

受け取った契約書を頭から順に読むのを、私はやめました。頭から読むと、前半に並んでいる定義や当事者の話で集中力を使い切ってしまって、いちばん大事な後半を流し読みしてしまうからです。実際、以前の私はそうなっていました。読んだつもりで、何も頭に残っていない。

いまは、次の順番で見ています。

  • 1. 業務の範囲(何をやるのか、どこまでが「やる」に含まれるのか)
  • 2. 報酬と支払い時期(いくら、いつ、どういう条件で払われるか)
  • 3. 修正・やり直しの扱い(何回まで、どこからが追加なのか)
  • 4. 契約期間と終わり方(更新されるのか、辞めるときはどうするのか)
  • 5. 権利まわり(作ったものが誰のものになるか)
  • 6. 秘密保持と、公開できる範囲(実績として出していいのか)
  • 7. その他(損害賠償、再委託、管轄など)

この順番にしている理由は単純で、上の3つで揉めた経験があって、下の4つでは揉めた経験がないからです。優先度は、自分が実際に痛かった場所の順に並べるのがいちばん現実的だと思っています。

1. 業務の範囲|「SNS運用」の四文字が何も説明していない

いちばん最初に見るのがここです。そして、いちばん曖昧に書かれがちなのもここです。

たとえば「SNS運用代行業務」とだけ書かれている契約書があったとします。この六文字の中に、実際は次のようなものが全部入り得ます。

  • 投稿の企画とコンセプト設計
  • 原稿・キャプションの作成
  • 画像や動画の制作
  • 投稿作業そのもの
  • コメントやDMへの返信
  • 数字の集計とレポート作成
  • 月次のミーティング

私はいま、企画から分析まで丸ごと引き受ける形の仕事をしています。だからこの範囲の広さ自体は問題ないのですが、問題は「六文字しか書いていない契約書だと、後から足されたものも六文字の中に入っていることになる」ことです。

なので私は、契約書に業務範囲が細かく書かれていない場合、契約書とは別に、やることの一覧をこちらから文章にして送るようにしています。「認識合わせとして、こういう内容で進めます」という形です。契約書を書き換えてくださいと言うより、こちらの方がお互いに角が立ちません。

そのときそう思ったのは、正直に言うと防衛的な理由からでした。私はもともと、金額を出すときも自信がなくて自分から下げてしまうタイプです。範囲が曖昧なまま始めると、追加の作業が来ても「言い出せないまま全部やる」側に確実に転ぶ。自分がそういう人間だと分かっているので、始まる前に文字にしておくしかない、というだけの話です。

「その他、付随する業務」の一行

業務範囲の最後に「その他、これに付随する業務」と書いてある契約書はよくあります。これ自体は、いちいち全部列挙できないので入っているだけで、悪意のある文言ではないと私は思っています。

ただ、前の項目が具体的に書かれているかどうかで、この一行の重さは全然変わります。前が具体的なら、付随する業務の範囲も自然と限定されます。前が「SNS運用代行業務」の六文字だけなら、この一行は事実上「なんでも」と同じ意味になります。見るのは一行そのものではなく、その上に何行あるかです。

2. 報酬と支払い時期|「翌々月末」を読み飛ばさない

収入を計算する様子

次に見るのが、報酬の額と、支払いのタイミングです。額は誰でも見ます。見落としやすいのはタイミングのほうです。

ここで確認しているのは、次のあたりです。

  • 締め日はいつか(月末締めなのか、20日締めなのか)
  • 支払いは締めから何か月後か(翌月末か、翌々月末か)
  • 請求書はいつまでに出すのか
  • 振込手数料はどちら持ちか
  • 消費税は内税か外税か
  • 源泉徴収されるのかどうか

「翌月末」と「翌々月末」は、契約書の上では一文字しか違いません。でも、実際の生活の上ではまるで違います。月末締めの翌々月末払いだと、働いてから入金までが最長で約2か月あります。

私は独立してから半年くらい無収入で、そのあとの半年も収入は一桁万円台でした。その間はアルバイトをしながら食いつないでいました。あの時期に、入金が2か月後の契約をよく分からずに複数持っていたらどうなっていたかを考えると、少し怖くなります。手元にお金が無い時期ほど、額より入金日のほうが生死に関わります。

いまは複数社と契約しているので、月ごとに入金日がバラバラです。額を足すのではなく、月のどのタイミングにいくら入るかで見ないと、通帳の実感と合いません。ここは契約書を読む段階で押さえておくと、あとが楽です。

単価が固定なのか、量で変わるのか

あわせて見ているのが、報酬が固定なのか、作業量に連動するのかです。

独立初期にやっていた動画編集の案件は、1本4,000円から10,000円くらいでした。金額は動画の尺によって変わりました。この形は分かりやすくて、多く作れば多く入るし、作らなければ入らない。責任範囲も、渡した本数と一致します。

いまの業務委託は月額の固定に近い形です。この形の落とし穴は、作業量が増えても金額が動かないことです。正直に書くと、いまの業務委託は仕事量が多くて大変なわりに、利益は低いです。始めたときの想定より、こちらがやることが増えていった結果です。

だから固定の契約を見るときは、金額の横に「この金額で、月にどれくらいの量までを想定しているか」を自分でメモするようにしました。契約書に書いてもらえるならそれがいちばんですが、書いてもらえなくても、自分の側に基準があれば、増えたときに気づけます。気づけないのがいちばんまずい。

3. 修正とやり直し|どこからが追加作業なのか

3番目に見るのが修正の扱いです。ここは契約書に書かれていないことのほうが多い項目でもあります。

制作物を納める仕事だと、必ず修正が発生します。問題は、修正が「当然含まれるもの」なのか「追加のもの」なのかの線が、契約書にも、口頭のやり取りにも無いまま進むことです。

私が線として意識しているのは、最初に合意した方向の中での直しか、方向そのものが変わる直しかです。前者は含まれるもの、後者は本来なら別の話、という考え方です。ただ、これを実際に相手に言えているかというと、言えていないことのほうが多いです。書いておいて何ですが、正直なところです。

ひとつ、修正まわりで自分が痛かった話を書きます。動画のナレーションが長かったので、速度を上げて短くしようとしたことがありました。ナレーション自体は速くなったのですが、各カットの後ろに無音がそのまま残って、かえって間延びしました。速度だけ変えても、尺は直らなかったんです。

これは技術的な話ですが、契約の話でもあると思っています。「ちょっと速くしてください」という一言の修正が、実際には全カットの尺を組み直す作業になる。依頼の文字数と、作業の量は比例しません。だから、修正の回数だけを決めても意味が薄くて、何が発生するかを一度説明できるかどうかのほうが効きます。

4. 契約期間と、終わるときの決まり

期間のところで見ているのは、開始日と終了日そのものより、次の2つです。

  • 自動更新なのか、都度更新なのか
  • 途中で終わるときに、何日前に言えばいいのか

自動更新は、放っておけば続くので楽です。ただ、条件を見直すきっかけが無くなるという副作用があります。作業量が増えていっても、金額を見直す会話をする節目がどこにも無い。私はいま、この状態に近いです。

終わり方のほうは、「1か月前までに書面で通知」といった書き方が多いです。ここを読むときに私が思い出すのは、飲食の仕事を辞めたときのことです。あのときは電話で社長に伝えて、そのあと話し合いの場が持たれて、「もったいない」「やめないでほしい」と引き止められました。最終日は特別なことは何も起きず、スタッフに挨拶をして普通に終わりました。後日、お別れ会のようなものを開いてもらって、普通に楽しかったです。嫌いで辞めたわけではありませんでした。

辞め方が決まっているというのは、要するに辞めるときに交渉しなくていいということです。何日前に、どういう形で言えばいいかが最初から書いてあれば、そこに乗るだけで済みます。言い出すのが苦手な人間にとって、これは思っているよりありがたい条項です。私は契約期間の欄を、そういう目で見ています。

5. 権利まわり|作ったものは誰のものになるか

オンラインで学ぶ様子

5番目に見るのが、成果物の権利がどうなるかです。ここは正直、私が最初のころ完全に読み飛ばしていた場所でした。

見ているのは、大きく2つです。

  • 納品したものの権利が、いつ相手に移るのか(納品時か、入金時か)
  • 制作の過程で使った自分の手法やテンプレートまで、相手のものになる書き方になっていないか

1つ目は、入金前に権利だけ先に移る書き方だと、こちら側にはあまり嬉しくありません。2つ目は、自分の中に溜めてきたやり方まで持っていかれる形になっていないか、という話です。作ったもの自体が相手のものになるのは当然として、作り方まで含めた書き方になっていることが、たまにあります。

正直に書くと、この2つを見るようになったのは最近です。それまでは、権利の条項は「そういうものだろう」と思って通していました。読むようになったきっかけは、自分の作ったものが伸びた経験でした。

引き継いだクライアントの案件を、コンセプトから作り直したことがあります。それが最近になって伸びました。素直にうれしかったですし、クライアントも驚いていました。正直、自分でも驚きました。そのときに、自分がやったことに価値がついた瞬間、それが誰のものかという話が急に現実になると気づきました。それまでは、価値が無いと思っていたから気にしていなかっただけです。

6. 秘密保持と、実績として出せるかどうか

秘密保持そのものは、守るのが当然なので、条項として読んで揉めることはあまりありません。私が見ているのは、そこに「実績として公開していいか」が含まれているかどうかです。

これは営業が苦手な人ほど大事だと思っています。私は初対面の相手とオンラインで話すと、人見知りと自信のなさが前面に出てしまいます。自分でも分かっていて、正直、その時間が本当に嫌です。だから、話さずに伝わるものをできるだけ用意しておきたい。実績はその筆頭です。

実際、いま自分の集客用のLPでは、前面に出す軸を「7社の運用を継続して任されていること」と「企画から分析まで丸投げできること」に変えました。飲食の現場10年という経歴は残しつつ、そこを前に出す形です。ここで書けることが増えるかどうかは、公開の可否がどうなっているかに直結します。

会社名を出せない場合でも、「業種と規模だけなら書ける」「数字だけなら書ける」といった中間の形はあり得ます。全部だめか全部よしかの二択ではないので、始まる前に一度聞いておくと、後から気まずくならずに済みます。私は、契約のときに聞かずに、後で聞きづらくなったことがあります。聞ける機会は最初しかない、と思っておいたほうがいいです。

7. 過去に困ったところ|契約書に書いていなかったこと

ここまでは条項の話でした。最後に、契約書に書いていなかったせいで困ったことを書きます。私の場合、揉め事らしい揉め事ではなく、「返事が来なくなる」という形でした。

独立して最初の仕事は、クラウドソーシングでもらった動画編集の案件でした。その相手からは、すぐに連絡が来なくなりました。何がまずかったのかも分からないまま終わりました。

提案の段階でも同じことがありました。提案資料を見てもらえたことはあったのですが、そのあとの連絡は一切来ませんでした。こちらからリマインドする勇気が無くて、そのまま終わりました。

このとき私が思ったのは、契約書があれば防げたのに、ということではありません。むしろ逆で、連絡が来なくなること自体は契約書では防げないと思いました。契約書ができるのは、連絡が来なくなったときに、こちらに何が残るかを決めておくことだけです。着手金があるか、中間の納品時点で一度精算されるか。そういう形で、途中で切れたときの損失を小さくしておく話です。

だから私は、契約書を「相手を縛るもの」だとは思っていません。言い出せない自分の代わりに、最初から書いてあることにしておくための道具だと思っています。金額を自分から下げてしまう癖がある人間には、この使い方がいちばん合っています。

そもそも契約書が無い場合

クラウドソーシング経由の小さい案件では、契約書らしい契約書が無いことも普通にあります。私も初期はそうでした。プラットフォームの規約が実質的な契約書になっている形です。

その場合、私が代わりにやっているのは、やり取りの中で決まったことを、こちらから一度まとめて文章で送っておくことです。「認識のすり合わせとして、こういう内容で進めます」の形にしておけば、契約書ではないにせよ、後から見返せる記録にはなります。

私はテキストのやり取りが昔から苦手で、いまも苦手なままです。だから、まとめて送るのは正直、毎回おっくうです。それでも、後から口頭の記憶を突き合わせる作業のほうが、比べものにならないくらい嫌でした。

8. 契約書を読むときの、自分向けのルール

動画編集の作業画面

最後に、条項の話ではなく、読むときの自分の癖について書きます。私は最近、契約書に限らず、「表示だけを見て安心しない」ということを強く意識するようになりました。

きっかけは、自分の自動化での失敗です。Xの自動投稿を組んだとき、タスクスケジューラーの画面には全部「準備完了」と表示されていました。それなのに、実際は一度も動いていませんでした。原因は、登録スクリプトで変数名にPowerShellの予約語を使っていて、タスクに渡す引数が丸ごと空になっていたことでした。エラーもログも残らないので、気づくのにずいぶん時間がかかりました。

それ以来、タスクを登録したあとは「準備完了」の表示だけで安心せず、渡している引数が空になっていないかを毎回確かめるようにしています。

契約書も、これと同じだと思っています。署名が済んでいることと、中身が自分の想定と合っていることは、別の話です。「契約済み」という表示は、中身が正しいことを何ひとつ保証してくれません。私が困ったことのほとんどは、契約書に書いてあることが間違っていたからではなく、書いていないことを書いてあるつもりでいたから起きました。

もうひとつ、自分の書類でも似たことがありました。集客用のLPを書き換えていたときに、キャンペーンの期限が6月末のまま失効していたことと、料金の説明に使っていた金額がどのプランとも一致していないことが見つかりました。書いた本人が、書いたまま忘れていたわけです。相手が出してくる契約書にも、同じことは起こり得ます。悪意ではなく、更新されていないだけ、という形で。

だから、読んでいて金額や日付に違和感があったときは、「たぶんこういう意味だろう」で流さずに、一度確認するようにしています。聞くのは気まずいですが、後から食い違いが出るほうがはるかに気まずいです。

あわせて読みたい

まとめ|見る順番は、自分が痛かった順でいい

この記事で書いたことを、もう一度まとめます。

  • 私が最初に見るのは、業務の範囲と、支払いのタイミングの2か所
  • 業務範囲は、書かれた文字数がそのまま曖昧さの量になる。短いなら、自分で一覧を作って送っておく
  • 報酬は額より入金日。「翌月末」と「翌々月末」は生活の上ではまるで違う
  • 固定の契約は、量が増えても金額が動かない。想定量を自分の側でメモしておく
  • 修正は回数より、何が発生するかを説明できるかどうか
  • 終わり方が書いてあるのは、辞めるときに交渉しなくていいということ
  • 実績として公開できるかは、契約のときにしか聞けない
  • 契約書があっても、連絡が来なくなること自体は防げない。防げるのは、そのときの損失の大きさだけ

契約書のチェックポイントを網羅した解説は、探せばいくらでも出てきます。それを全部やろうとすると、たいてい途中で疲れて、結局ざっと見て署名することになります。少なくとも私はそうでした。

なので、順番は自分が実際に痛かったところからでいいと思っています。私の場合は、範囲と入金日でした。人によっては、権利のところかもしれないし、終わり方かもしれません。一度痛いと、その項目だけは二度と読み飛ばさなくなります。それを一つずつ増やしていくのが、いちばん現実的なやり方だと思っています。

フリーランスはメンタルが不安定になりやすいし、将来も不安です。それでも、好きなことを好きな時間にやれている今の環境は、辞めてよかったと今になって思えます。契約書を読むのは、その環境を続けるための、地味だけれど効く作業のひとつです。

これから業務委託の仕事を増やしていきたい方は、案件を紹介してくれるフリーランスエージェントに登録して、実際の契約条件を何本か見比べてみるところから始めると、自分の基準が作りやすくなります。条件の書き方は会社ごとにかなり違うので、複数見るだけでも「何が普通で、何が普通でないか」の感覚がつかめます。

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