この記事では、フリーランスや個人事業主が使う屋号の決め方を、私が実際に自分の屋号を決めたときの考え方と一緒に書いています。書いているのは、飲食の現場に10年いたあとSNS運用代行で独立した「さとり」という個人事業主です。屋号は SATORI Revontulet(サトリ・レヴォントゥレ) にしました。
先に結論から書きます。屋号選びで本当に時間を使う価値があるのは、次の3つだけでした。
- 読めるか(初対面の相手が声に出して読めるか)
- 説明できるか(なぜこの名前なのかを、自分の言葉で言えるか)
- 先に使われていないか(同じ名前で活動している人がいないか)
逆に、「かっこいいか」「ウケるか」は最後まで判断がつきませんでした。ここで悩み始めると、いつまでも決まりません。私自身、名前を考えていた時間は、正直なところ売上には1円も直結していません。それでも決めておいてよかったと思っているので、その理由も含めて書きます。
そもそも屋号は必要なのか
結論としては、無くても事業は始められます。開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)には屋号を書く欄がありますが、空欄のまま提出することもできます。届出そのものについては国税庁のページに案内があります(国税庁 No.2090 新たに事業を始めたときの届出など)。制度の細かい部分は変わることがあるので、実際に出すときは公式の最新情報を確認してください。
つまり、屋号は「無いと違法」というものではなく、名乗るかどうかを自分で選べるものです。だからこそ、必要かどうかを先に考えたほうがいいと思っています。
それでも私が屋号を付けた理由
私が屋号を決めたのは、自分の名前だけで動いていくのが、自分の性格に合っていなかったからです。
私は営業が本当に苦手です。テキストのやり取りも昔から苦手ですし、初対面の相手とオンラインで話すと、人見知りと自信のなさが前面に出てしまいます。自分でも分かっています。正直、その時間が本当に嫌でした。金額を出すときも、自信がないから自分から下げてしまっていました。
そういう状態のときに、「私」ではなく「うちの屋号」として話せる名前があるのは、思っていたより支えになりました。相手に出す資料や請求書に載る名前が個人名だけだと、どうしても自分ひとりの心細さがそのまま出てしまう感じがあったからです。屋号があると、看板の後ろに少しだけ立てるような感覚があります。
もちろんこれは私の性格の話なので、「自分の名前でやるほうがやりやすい」という人は、無理に付ける必要はないと思います。
私が SATORI Revontulet に決めるまで
私の屋号は SATORI Revontulet、読みは「サトリ・レヴォントゥレ」です。ふたつの単語でできています。
SATORI=本質に気づくこと
SATORI には「本質への洞察」という意味を置いています。同時に、Seek And Transform Origins into Real Impact の頭文字にもなっています。日本語にすると「本質を見抜き、価値に変える」です。
ここを軸にしたのは、自分がやってきた仕事が、結局そこに集約されるからでした。SNSの運用代行も、記事を書く仕事も、表面の作業だけを回していると成果が出ません。何が本当の詰まりどころなのかを見つけるところにしか、自分の価値が無いと感じていました。
Revontulet=暗闇の中で現れる光
Revontulet はフィンランド語で「オーロラ」を指す言葉です。直訳すると「狐の火」になります。フィンランドの神話では、北の雪原を走る狐が尻尾で雪を蹴り上げ、その火花が空に舞い上がってオーロラになると言われています。
この言葉を選んだのは、暗闇の中で現れる光という意味を持たせたかったからです。独立してから半年くらいは無収入でした。そのあとの半年も、収入は一桁万円台のままで、アルバイトをしながら食いつないでいました。仕事が取れないので、毎日なにかしら試行錯誤していた時期です。ココナラでコンサルをやったり、YouTubeをやったり、クラウドソーシングをやったり、思いつくものは一通りやりました。
名前に「光」の意味を入れたのは、そういう時期に、明るい状態の自分を前提にした名前は付けられなかったからだと思っています。暗いところに立っている前提で、それでも出てくる光、という順番の言葉のほうが、自分には嘘がありませんでした。
説明できる名前にしておくと、後から効く
この由来を書いていて改めて思ったのは、意味を説明できる名前は、それ自体が話のきっかけになるということです。営業が苦手な人間にとって、「その名前どういう意味ですか」と聞いてもらえる要素があるのは、けっこう大きいです。自分から売り込む言葉を探さなくても、会話が一往復増えます。
逆に、語感だけで決めていたら、この一往復は生まれなかったはずです。ここは運が良かった部分でもあります。
屋号の決め方:私が使った順番

いま同じことをやり直すなら、この順番で決めます。
1. 自分の仕事を一文にする
名前を考える前に、自分が何をする人なのかを一文にします。私の場合は「本質を見抜いて、価値に変える」でした。ここが決まっていないと、名前の候補を並べても選べません。選ぶ基準が無いからです。
2. その一文を、単語に落とす
一文の中から、核になる言葉を抜き出します。私は「気づき」「本質」の側から SATORI を取りました。日本語のままでも、英語でも、他の言語でも構わないと思います。
3. 意味を足す言葉を、もう一語だけ探す
単語ひとつだと、どうしても既に使われていることが多くなります。私は二語目に Revontulet を足しました。二語にすると、被る可能性がかなり下がりますし、意味の幅も出ます。
ただし、三語以上はおすすめしません。名乗るときに長すぎて、相手が覚えられなくなります。二語でも、私の屋号は読み方を聞かれることがあります。
4. 声に出して読んでみる
ここは実際にやったほうがいいところです。文字で見ると良く見えても、口に出すと言いにくい名前があります。オンラインの打ち合わせで自分から名乗る場面を想像して、二回か三回読んでみると分かります。
5. 検索して、先に使われていないか確認する
候補が出たら、そのまま検索します。同じ名前で活動している個人や会社がいないかを見ます。商標として登録されていないかは、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で調べられます。無料で使えます。
ここを飛ばすと、後から名前を変えることになりかねません。屋号は変えられますが、変えた時点で、それまでに名前で覚えてもらったぶんはリセットに近くなります。手間としては、最初に検索するほうが圧倒的に軽いです。
決める前に考えておくとよかったこと
ドメインと、SNSのアカウント名まで見ておく
屋号を決めたあと、サイトやSNSのアカウントを作ることになります。私の場合、自社サイトを公開したのは2026年8月6日で、屋号を決めたのはそれよりずっと前でした。名前を決める時点で、同じ名前でドメインやアカウントが取れるかまで見ておくと、後の手戻りが減ります。
ちなみに、そのサイト公開のときには、同じサイトを2つ作ってしまっていたことに気づいて一本化する、という別のやらかしもありました。名前の話とは関係ありませんが、こういう手戻りは本当に時間を食います。減らせるところは先に減らしたほうがいいです。
読み方を、自分で決めて書いておく
外国語を使う場合、読み方が一通りに決まりません。私は「サトリ・レヴォントゥレ」と決めて、書ける場所には読みを添えるようにしています。ここを決めておかないと、相手ごとに違う読み方をされて、自分でも訂正するのが面倒になります。
個人名を出すかどうかは、別で考える
屋号を付けたからといって、個人名を隠す必要はありません。私は屋号と「さとり」という名前を両方使っています。実体験を書く仕事をしている以上、書いている人間が誰なのかを消すと、書く内容の重みが落ちるからです。
屋号を決めたあとに、実際に使う場所

名前を決めると、そのあと実務のいろいろな場所に登場します。私が実際に使っている場所は、だいたい次のあたりです。
- 開業届(屋号を書く欄があります)
- 請求書(私はフォルダにまとめて保存しています)
- 会計ソフト(私は freee を使っていて、確定申告は青色でやっています)
- サイトやSNSの名義
ここで少しだけ実務の話を挟むと、初めての確定申告でいちばん大変だったのは、1年分の帳簿を一気につけたことでした。期中にためてしまい、最後にまとめて入力することになりました。屋号を考えている時間より、この作業のほうが何倍もつらかったです。
また、会社を辞めたあとの健康保険は、任意継続ではなく国民健康保険にしました。屋号とは直接関係ありませんが、開業まわりで決めることは名前だけではない、というのは書いておきたいところです。名前を考えるのはいちばん楽しい工程なので、そこで止まってしまうと、面倒な手続きが後ろに全部残ります。
正直に書くと、屋号を決めても仕事は来ませんでした
ここは煽らずに書いておきます。屋号を決めたことで仕事が増えた、という実感は私にはありません。
独立して最初の仕事は、クラウドソーシングでもらった動画編集の案件でした。その相手からは、すぐに連絡が来なくなりました。ココナラではコンサルの案件を10件ほどもらいましたが、時給に換算すると安かったです。初めて報酬を受け取ったときは、うれしさより先に「これで生きていける気がしない」と思いました。屋号があってもなくても、この時期は同じだったと思います。
提案資料を見てもらえたことはありましたが、そのあとの連絡は一切来ませんでした。こちらからリマインドする勇気がなくて、そのまま終わりました。名前は、こういう場面では何もしてくれません。
それでも私が屋号を決めてよかったと思っているのは、自分の仕事を一文にする作業が、名前を決める過程に含まれていたからです。「本質を見抜き、価値に変える」という一文は、名前を考えるために作った言葉ですが、今も自分が何をする人なのかを説明するときに使っています。名前そのものより、名前を決めるために考えた中身のほうが残りました。
もうひとつ、これは最近になって分かったことですが、成果は遅れて出てきます。引き継いだクライアントの案件をコンセプトから作り直したことがあって、それが最近になって伸びました。素直にうれしかったですし、クライアントも驚いていました。正直、自分でも驚きました。ただ、伸びるまで手応えは一切ありませんでした。やっている最中は、効いているのかどうか分からないままでした。
だから今は、反応が無い期間をすぐに失敗とは思わないようにしています。屋号も同じで、決めた直後に何かが変わるものではないと考えたほうが、気持ちが楽です。
確定申告そのものの進め方(いくらから必要か・何を用意するか)は副業の確定申告でやること|いくらから必要か・何を用意するかにまとめています。
まとめ:屋号は「後から変えられる」前提で決めていい

最後にもう一度まとめます。
- 屋号は無くても開業できる。必要かどうかから考えていい
- 決めるときに時間を使う価値があるのは、読めるか・説明できるか・被っていないかの3つ
- 自分の仕事を一文にしてから、そこから単語を取ると決まりやすい
- 二語くらいが、被りにくくて覚えやすい
- 検索と商標の確認(J-PlatPat)は先にやったほうが、手間が軽い
- 名前を決めても仕事は増えない。増えるのは、自分の説明のしやすさ
完璧な名前を探し始めると、いつまでも決まりません。私も、いま振り返れば「本質」と「光」というふたつの意味を置いただけです。それでも、聞かれたときに由来を話せるので、今のところ困っていません。
そして、名前が決まったら次は開業まわりの手続きです。私は会計に freee を使っていて、確定申告は青色でやっています。ここでひとつだけ先に伝えておきたいのは、帳簿は期中からつけたほうがいいということです。私は1年分を最後に一気に入力することになって、それがいちばん大変でした。屋号を考えるのが楽しい工程なのは確かですが、名前が決まったら、その勢いのまま会計の入り口まで作ってしまうのがおすすめです。そこまで済ませておくと、あとは仕事に集中できます。


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