初めての確定申告でいちばん大変だったのは、書類の書き方でも、税金の計算でもありませんでした。1年分の帳簿を、最後にまとめて一気につけたことです。期中にためてしまって、最後に全部やることになりました。作業そのものより、「これ全部やらないと終わらない」という状態に入ったことがきつかったです。
この記事では、私が初めて確定申告をしたときに実際につまずいた場所と、そのときどう感じたかを順番に書きます。申告が必要かどうか、いくら税金がかかるかは人によって違うので、この記事では断定しません。あくまで「初めての人がどこで詰まりやすいか」を先に知っておくための記事です。
書いているのは、元調理師で飲食の現場に10年いて、そこからSNS運用代行のフリーランスとして独立した人間です。独立してから半年ほどは無収入で、そのあとの半年も収入は一桁万円台。その間はアルバイトをしながら食いつないでいました。つまり、「稼げている人が余裕を持ってやった申告」ではありません。収入が少ないなりに、初めての申告でつまずいた記録です。
いちばんつまずいたのは、帳簿を最後にまとめてつけたこと
先に結論を書いてしまいましたが、私の最大のつまずきはここでした。1年のあいだ、記帳をあとまわしにしていたのです。
あとまわしにした理由は、はっきりしています。取引が少なかったからです。独立して最初の半年は無収入で、そのあとも一桁万円台。月に数件しか動きがない月もありました。数件しかないのだから、あとでまとめてやれば十分だろう、と思っていました。
ところが、いざ最後にまとめてやろうとすると、件数が少ないことは全然救いになりませんでした。困ったのは量ではなく、思い出す作業のほうです。
- この入金は、どの案件のぶんだったか
- この支出は、仕事のために使ったものだったか、私用だったか
- 同じ相手から複数回入金があるとき、どれがどの請求に対応しているか
その場でやっていれば3秒で分かることを、何か月もあとから思い出そうとしていました。1件あたりは小さい引っかかりでも、それが1年ぶん積み上がると、単純に終わりが見えなくなります。
そのときに思ったのは、「これは能力の問題ではなくて、順番の問題だった」ということでした。難しい作業を後回しにしたのではなく、簡単な作業を、難しくなる時期まで放置しただけです。
そもそも「自分は申告が要るのか」で止まっていた
帳簿より前の段階で、地味に時間を取られたのがここでした。副業や独立したての時期は、収入の形がきれいに揃っていません。
私の場合、独立初期の収入源はこんな感じでした。
- クラウドソーシングでもらった動画編集の案件。1本4,000円から10,000円くらいで、動画の尺によって金額が変わっていました
- ココナラでのコンサル案件。1本3,000円で、10件ほど受けました
- そのあいだ食いつなぐためのアルバイト
金額の出どころがばらばらで、しかも小さい。この状態で「自分は申告が要るのか、要らないのか」を判断しようとすると、ネットの情報がいくらでも出てくるぶん、かえって決められなくなりました。
ここについては、国税庁が「給与所得者で確定申告が必要な人」という形で条件を公開しています(国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人)。給与を1か所から受けている人については、給与以外の所得の合計が20万円を超えるかどうかが基準のひとつとして示されています。
ただし、これは条件のうちのひとつです。給与が複数あるかどうか、他にどんな所得があるかで扱いは変わりますし、所得税の申告が要らないケースでも住民税の扱いは別だと言われています。私は税の専門家ではないので、要否の判断はここでは断定しません。自分がどれに当たるかは、上の国税庁のページか、住んでいる自治体の窓口で確認してください。
そのうえで、当時の自分に言いたいことがひとつだけあります。要るか要らないかを調べている時間より、記録を残す時間のほうが先に必要でした。要ると分かってから記録を作り始めると、私と同じことになります。
何を用意すればいいのか分からなかった

「確定申告 何を用意する」で検索していた時期があります。出てくる一覧は正しいのだと思いますが、初めてだと、その一覧が自分の状況のどれに当たるのかが分かりませんでした。
結局、私が集めることになったのは、大きく分けてこの3種類でした。
- 売上の証拠。誰にいくら請求して、いつ入金されたか。私は請求書をフォルダにまとめて保存しています
- 経費の証拠。仕事のために払ったものの記録
- 自分に関する情報。本人確認や、口座の情報など
この中でいちばん助かったのは、請求書をフォルダにまとめて保存していたことでした。特別なことは何もしていなくて、出したものを1か所に入れていただけです。それでも、あとから「この月に何を出したか」をたどるときの起点になりました。
逆に、いちばん困ったのが経費側です。売上は相手がいるので記録が残りますが、経費は自分しか知らないので、記録していなければ、そこに何もありません。独立するために入った動画編集のスクールは費用が約70万円、期間は6ヶ月でしたが、こういう大きい支出は覚えていても、小さいものはあとから思い出せませんでした。
経費としてどこまで入れられるかは、仕事の内容によって変わる話なので、ここでは踏み込みません。ただ、入れるかどうかを迷えるのは、記録が残っている場合だけです。記録が無ければ、迷う手前で終わります。
青色にするかどうかで迷った
私はいま、確定申告は青色でやっています。ただ、最初に迷ったのは事実です。
迷った理由は、単純に「よく分かっていなかったから」でした。有利らしい、という話は見かけるけれど、そのぶん何をしなければいけないのかが分からない。分からないから決められない、という状態でした。
青色申告制度そのものは国税庁のページに書かれています(国税庁 No.2070 青色申告制度)。私が最初に見落としていたのは、次の2点でした。
- 申請には期限がある。青色申告をしようとする年の3月15日まで、というのが原則で、その年の1月16日以降に新しく事業を始めた場合は開業から2か月以内、と示されています
- 記帳が前提になっている。年末に貸借対照表と損益計算書を作れるような正規の簿記によることが原則とされていて、書類の保存期間も定められています
ここを読んだときに、自分の失敗の構造がやっと分かりました。私は「申告のときに頑張るもの」だと思っていたけれど、実際は「1年を通してつけておくもの」だったということです。1年分をまとめてつける羽目になったのは、単に面倒くさがったからではなくて、制度の前提を勘違いしていたからでもありました。
どちらを選ぶべきかは、事業の状況によって変わります。有利不利の断定はしません。ただ、選ぶかどうかを考えること自体に期限がある、というのは知っておいて損がない情報だと思います。
会計ソフトを入れるタイミングを間違えていた
いま会計に使っているのは freee です。結果として助かっているのですが、正直に書くと、入れるのが遅かったと思っています。
私は「まず自分の状況を整理してから、道具を選ぼう」と考えていました。順番として間違っていない気がしていたのですが、実際に起きたのは逆でした。整理する道具が無いから整理が進まず、整理が進まないから道具を選ぶ判断もできない。そのまま時間だけが過ぎて、最後にまとめてやることになりました。
これは自動化の仕事をしていて何度も感じることと同じでした。手を動かさずに考えている時間は、進んでいるように見えて、実際には何も残っていません。記帳も同じで、残るのは考えた時間ではなく、入力された1行のほうです。
会計ソフトの料金やプラン内容は変わることがあるので、金額はここには書きません。2026年8月時点の目安として調べるにしても、最新の条件は公式サイトで確認してください。私が言えるのは、道具の比較で悩んでいる期間が長引くくらいなら、早めにどれかを動かし始めたほうが、少なくとも私の場合は楽だったということだけです。
健康保険や年金の切り替えも、同じ時期に来る

確定申告そのものではありませんが、初めての人がまとめて食らうので書いておきます。会社を辞めると、税金の話と同時に、保険や年金の切り替えもやってきます。
私は会社を辞めたあと、健康保険は任意継続ではなく国民健康保険にしました。この選択が全員にとって正解かどうかは、条件によって変わるので断定しません。私が伝えたいのは選び方ではなく、これが「確定申告とは別の手続き」として、ほぼ同じ時期に発生するということのほうです。
独立の準備をしているときは、どうしても仕事のことばかり考えます。案件をどう取るか、何のスキルを伸ばすか。そちらに気を取られていると、この手の手続きは完全に視界の外にあります。私も、辞めることを家族に相談せず自分で決めたので、なおさら誰からも「それはどうするの」と聞かれませんでした。
実際にやってみて思ったのは、これらは難しい作業ではないということです。ただ、知らないと存在に気づけない種類のものでした。難しさではなく、認知の問題です。
収入が少ない年ほど、面倒になることがある
意外だったのがここです。「収入が少ないなら申告も簡単だろう」と思っていましたが、私の場合はそうなりませんでした。
独立してから半年は無収入、そのあとの半年も一桁万円台で、その間はアルバイトをしていました。仕事が取れないので、毎日なにかしら試行錯誤していた時期です。ココナラでコンサルをやったり、YouTubeをやったり、クラウドソーシングをやったり、思いつくものは一通りやりました。
あがいた結果として、収入の出どころが増えました。金額は小さいのに、種類だけが増えている状態です。1件3,000円のコンサルが10件、1本4,000円から10,000円の編集案件、そこにアルバイト。金額の合計は大したことがないのに、記録する対象としては、それなりの数になります。
だから、「今年は少ないから、あとでいいや」という判断は、私の場合は完全に逆でした。少ない時期こそ、いろいろ試していて、記録がばらけている。落ち着いて数本の柱で回っている時期のほうが、むしろ整理は楽です。
初めて報酬を受け取ったとき、うれしさより先に「これで生きていける気がしない」と思いました。その気持ちのまま毎日いろいろ試していたので、記録どころではなかった、というのも正直なところです。ただ、それでも1行だけ書いておけばよかった、とは今でも思います。
いま初めてやるなら、この順番でやります

ここまでのつまずきを踏まえて、もし自分が初めての年に戻れるなら、この順番でやります。税額や要否の判断は含めていません。「詰まらないための順番」だけです。
1. 収入が発生する前に、記録を置く場所をひとつ決める。私は請求書をフォルダにまとめて保存していますが、最初は本当にそれだけでいいと思います。
2. 会計ソフトを先に動かし始める。整理してから選ぼうとすると、私のように、選ぶ前に1年が終わります。
3. 案件が終わったその日に入力する。まとめてやらない、というより、まとめてやれる作業ではなかった、というのが実感です。
4. 青色にするかどうかを、期限の存在込みで早めに調べる。申請の期限は年の途中ではなく、原則として申告しようとする年の3月15日までです。
5. 保険や年金の切り替えを、税金とは別枠のタスクとして書き出しておく。同じ時期に重なるので、ひとまとめにすると片方が抜けます。
6. 分からないところは、自分で結論を出さずに国税庁のページか窓口で確認する。ここだけは、調べる時間をケチらないほうがいいと思っています。
確定申告そのものの進め方(いくらから必要か・何を用意するか)は副業の確定申告でやること|いくらから必要か・何を用意するかにまとめています。
まとめ
初めての確定申告で私がつまずいたのは、専門的なところではありませんでした。1年分の帳簿を最後にまとめてつけたこと。これがすべてです。
そして、そうなった原因は、面倒くさがったからというより、確定申告を「その時期に頑張るイベント」だと思っていたことにありました。実際は、1年を通して少しずつ残しておくもので、申告の時期にやるのは、その集計のほうでした。この勘違いに気づくのが1年遅かった、というだけの話です。
申告が必要かどうか、いくらになるか、青色と白色のどちらが向いているか。ここはこの記事では断定しません。人によって違いますし、私は税の専門家ではないからです。ただ、どの結論になったとしても、記録が残っていないと手が止まる、という点だけは共通していると思います。
収入がまだ小さい時期ほど、「これくらいなら大丈夫だろう」と思いがちです。私もそう思っていました。実際には、小さい時期のほうが試行錯誤が多くて、記録はばらけます。今日から始められることがあるとすれば、金額の大小に関係なく、入金と支出を1か所に置き始めることだけだと思います。
もし今、独立や副業の入口で「何から手をつければいいか分からない」状態なら、まずは記録を置く場所と、それを入力する道具を先に決めてしまうことをおすすめします。私はそこを後回しにしたせいで、1年ぶんの思い出し作業をする羽目になりました。会計ソフトの選び方や、開業まわりで実際にやったことは別の記事にまとめているので、必要なところから読んでみてください。


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