会社を辞めてフリーランスになるとき、避けて通れないのが健康保険と年金の切り替えです。この記事では、私が実際にどちらを選んで、何をしたのかを書きます。先に結論だけ言うと、私は任意継続ではなく国民健康保険を選びました。そして年金は、厚生年金から国民年金へ切り替えました。
書いているのは、飲食の現場に10年いた元調理師です。そこからSNS運用代行のフリーランスとして独立しました。営業が苦手で、その苦手を埋めるために自動化を作り始めた在宅ワーカーでもあります。税理士でも社会保険労務士でもないので、この記事は「制度の解説」ではなく「実際に手続きをした一人の記録」として読んでください。
この記事で分かるのは、次のことです。
- 退職後の健康保険には選択肢があり、私はどちらを選んだか
- 年金の切り替えで何をしたか
- 手続きそのものよりも、私にとってきつかったのはどこだったか
- 会社を辞める前に確認しておくと楽になること
金額の話は、私自身に起きたことの範囲でしか書きません。保険料は前年の所得や住んでいる自治体で変わるので、「いくらになるか」は人によって違います。そこを一般化して書くと、読んだ人の判断を狂わせるだけだと思っています。
退職すると、健康保険と年金は自動では続かない
会社員のあいだは、健康保険も年金も給与から引かれていました。手続きらしい手続きをした記憶がありません。会社が全部やってくれていたからです。
ところが会社を辞めると、その仕組みごと外れます。健康保険証は返却することになりますし、厚生年金からも外れます。そして、それを埋める手続きは自分でやることになります。誰も代わりにやってくれません。
私はこの「自分でやる」の部分を、辞めると決めたあとになって知りました。辞める理由のほうばかり考えていて、辞めたあとに発生する事務作業のことは、正直あまり想像していませんでした。
私が飲食の仕事を辞めると決めたのは、変わらない日常のまま今後もこれが続くのか、と考えた瞬間でした。労働時間が長くて体力的に辛い仕事を、この先ずっと続けるのは嫌でした。休みの日は体力が残らず、休みでも何もできずに終わっていました。頑張っても変わらないという事実があって、それがいちばん大きかったです。
そういうことを考えているときに、頭の中に「健康保険の切り替え」は一度も出てきませんでした。辞める判断と、辞めたあとの手続きは、まったく別のところにあります。そして後者は、必ず自分のところに回ってきます。
健康保険は「任意継続」か「国民健康保険」かを選ぶことになる
会社を辞めたあとの健康保険には、大きく分けて選択肢があります。私が把握していたのは次の2つでした。
- 任意継続。それまで入っていた会社の健康保険を、退職後もしばらく続ける形
- 国民健康保険。住んでいる自治体の健康保険に入る形
ほかに、家族の扶養に入るという選択肢もありますが、私の場合はそこは考えていませんでした。
この2つは「どちらが正解」というものではありません。どちらが安くなるかは、その人の状況で逆転します。だから制度としては選べるようになっているのだと思います。
私は国民健康保険を選んだ
結論から言うと、私は任意継続ではなく国民健康保険にしました。
ここで正直に書いておきたいのですが、私はこの選択を、精密な比較の末に決めたわけではありません。今になって「あのとき両方の金額をきちんと出して並べたか」と聞かれると、胸を張って「やりました」とは言えないです。
ただ、あとから振り返って自分の状況を見ると、国民健康保険を選んだこと自体は、結果として自分に合っていたと思っています。理由は独立してから半年くらいは無収入で、そのあとの半年くらいも収入は一桁万円台だったからです。その間はアルバイトをしながら食いつないでいました。
収入が落ちる前提なら、ここは自分の状況を確認する価値がある
ここは制度の話ではなく、私が実際にたどった感覚の話として書きます。
会社員のときと、独立して1年目の私とでは、収入の額がまったく違いました。半年無収入で、次の半年が一桁万円台です。会社を辞める前の私の収入を前提にした計算と、辞めたあとの私の収入を前提にした計算では、当然ながら見えてくる数字が変わります。
だから、辞めたあとに自分の収入がどう変わりそうかを、手続きの前に一度考えておくといいと思っています。私はそこを、あまり丁寧にやりませんでした。今から独立する人には、ここは一度立ち止まってほしいところです。
具体的な金額は、前年の所得と自治体によって変わります。任意継続にも国民健康保険にも、それぞれ条件や期限があります。正確なところは、必ず加入していた健康保険組合と、住んでいる自治体の窓口で確認してください。ここを記事の一般論で決めてしまうのは危険です。
年金は厚生年金から国民年金へ切り替えた

健康保険と同じタイミングで、年金の切り替えもありました。会社員のときは厚生年金でしたが、辞めると外れます。フリーランスは国民年金に入ることになります。
ここは私にとって、健康保険ほど迷う要素がありませんでした。選ぶというより、切り替えるという性質のものだったからです。
ただ、切り替えたあとに一つ、頭に残ったことがあります。厚生年金のときは会社と自分で負担を分け合う形でしたが、フリーランスになるとその形ではなくなります。会社員のときに給与明細で見ていた数字と、独立後に自分で払う数字は、意味が違うということです。
私はこのあたりを、切り替えの手続きをしながら「ああ、そういうことか」と理解していきました。先に理解してから手続きをしたわけではなく、手続きをしながら理解したというのが実際のところです。
手続きそのものより、収入が無い時期のほうがきつかった
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。
健康保険と年金の切り替えは、確かに面倒でした。でも、やること自体は終わりが見えている作業です。窓口に行って、必要なものを出して、手続きをすれば終わります。時間はかかりますが、いつか終わります。
私にとって重かったのは、そこではありませんでした。収入が無いのに、支払いだけは毎月来るという状態のほうです。
私は独立するためにスクールに入りました。動画編集のスクールで、費用は約70万円、期間は6ヶ月です。収入が無いまま費用だけが出ていく時期でした。そこに独立後の無収入期間が重なります。半年無収入で、その次の半年が一桁万円台です。
その間、仕事が取れないので毎日なにかしら試行錯誤していました。ココナラでコンサルをやったり、YouTubeをやったり、クラウドソーシングをやったり、思いつくものは一通りやりました。ココナラではコンサルの案件を10件ほどもらいました。1本3,000円です。時給に換算すると安かったですが、実績にはなりました。
独立して最初の仕事は、クラウドソーシングでもらった動画編集の案件でした。その相手からは、すぐに連絡が来なくなりました。独立初期の編集案件は、1本4,000円から10,000円くらい。動画の尺によって金額が変わりました。
初めて報酬を受け取ったとき、うれしさより先に「これで生きていける気がしない」と思いました。だからあがいて、毎日いろいろ試しました。
この時期に、社会保険料の支払いは普通にやってきます。仕事が無い月も来ます。ここが、切り替え手続きの本当の重さだと私は思っています。手続きは一度で終わりますが、支払いは続きます。
会社を辞める前に確認しておくと、あとが楽になること

私自身が「先にやっておけばよかった」と感じたことを書きます。制度の話ではなく、段取りの話です。
辞めるタイミングを、事務手続きの側からも見ておく
私は辞めることを、家族には相談しませんでした。自分で決めました。社長には電話で伝えて、そのあとに話し合いの場が持たれて、「もったいない」「やめないでほしい」と引き止められました。嫌いで辞めたわけではありません。料理そのものは好きでした。きつかったのは仕事の中身ではなく、労働時間のほうです。
そういう話し合いのほうに気持ちが向いていて、辞めたあとの事務作業を段取りとして考える時間は、ほとんど作っていませんでした。最終日は特別なことは何も起きず、スタッフに挨拶をして普通に終わりました。後日お別れ会みたいなものも開いてもらって、普通に楽しかったです。
そのあとで、手続きが自分のところにまとめて来ました。
「収入がゼロの期間があるかもしれない」を前提に置く
これがいちばん大きいです。私は半年無収入でした。その次の半年も一桁万円台でした。
もし辞める前の自分に一つだけ伝えられるなら、「その期間にも社会保険料の支払いは来る」ということを伝えたいです。収入が止まっても、生活と支払いは止まりません。
お金まわりを記録する場所を先に決めておく
私は確定申告を青色でやっています。会計に使っているのは freee です。請求書はフォルダにまとめて保存しています。
ただ、初めての確定申告でいちばん大変だったのは、1年分の帳簿を一気につけたことでした。期中にためてしまって、最後にまとめて入力することになりました。
社会保険料の支払いも、記録しておく対象のひとつです。独立直後は「まず生きること」で頭がいっぱいで、記録の仕組みを整えるところまで手が回っていませんでした。その結果が、あとでまとめて入力する作業です。切り替え手続きをするタイミングは、記録の置き場所を決めるにはちょうどいいタイミングだったな、と今は思います。
この手続きを「制度の勉強」にしなくていい
私は独立するとき、制度をきちんと理解してから動いたわけではありませんでした。手続きをしながら理解しました。
そのことに、当時は少し引け目がありました。ちゃんと調べてから動く人のほうが正しいような気がしていたからです。でも今は、全部理解してから動こうとすると、いつまでも動けないとも思っています。
健康保険と年金の切り替えは、窓口に行けば案内してもらえます。何が必要かも、その場で教えてもらえます。私が事前に完璧に理解しておくべきだったのは、制度そのものではなく、自分の収入がこれからどう変わるのかのほうでした。
制度は調べれば分かります。自分の収入がどうなるかは、調べても分かりません。だから怖いのだと思います。
独立後の不安定さについて、正直なところ

手続きの話から少し離れますが、この記事を読んでいる人が本当に気にしているのはここかもしれないので、書いておきます。
フリーランスはメンタルが不安定になりやすいし、将来も不安です。これは今もそうです。私はいま業務委託の仕事をしていますが、やっていること自体は会社員と変わらないと思っています。働く場所が違うのと、出社が無いだけです。
自社の収益はまだ立っていません。業務委託は仕事量が多くて大変なわりに、利益は低いです。AIを使った仕事に可能性は感じていますが、収益が立っていないので、方向性が合っているのか不安になることもあります。
それでも、好きなことを好きな時間にやれている今の環境は、辞めてよかったと今になって思えます。
当時は昼に出勤して真夜中に退勤する生活でした。付き合っている人と生活リズムが合わず、会えるのが夜になるので予定を合わせるのが難しかったです。休憩時間もほとんど取れませんでした。だんだん毎日が楽しくなくなってきていました。
健康保険と年金の切り替えは、その生活から出るために通った手続きのひとつです。面倒でしたが、面倒だっただけです。辞めるかどうかの判断に比べれば、はるかに軽い作業でした。
確定申告そのものの進め方(いくらから必要か・何を用意するか)は副業の確定申告でやること|いくらから必要か・何を用意するかにまとめています。
まとめ|私がやったことと、伝えたいこと
この記事で書いたことを整理します。
- 会社を辞めると、健康保険と年金は自動では続かない。切り替えは自分でやることになる
- 健康保険は、任意継続と国民健康保険から選ぶ形になる。私は国民健康保険を選んだ
- 年金は厚生年金から国民年金へ切り替えた。こちらは選ぶというより切り替える性質のもの
- どちらが得かは、前年の所得と自治体で変わる。正確なところは健康保険組合と自治体の窓口で確認する
- 私にとってきつかったのは手続きではなく、収入が無い時期にも支払いが来ることだった
- 辞める前に置いておくべき前提は「収入がゼロの期間があるかもしれない」ということ
- 切り替えのタイミングは、お金の記録の置き場所を決めるのにちょうどいい
最後にもう一度書いておきます。保険料の金額は人によって違います。私が国民健康保険を選んだのは私の状況での話であって、あなたにとって任意継続のほうが良い可能性は普通にあります。ここだけは記事の一般論で決めないでください。
そして、手続きは思っているより淡々と終わります。私は制度を理解しきる前に動きましたが、それで詰んだことはありませんでした。詰みかけたのは、収入のほうです。
独立を考えていて、開業後のお金の記録をどこに置くか決まっていない方は、そこから先に決めてしまうのが早いと思います。私は freee で青色申告をしていますが、1年分をまとめて入力する羽目になった原因は、記録の仕組みを後回しにしたことでした。切り替え手続きで役所に行くタイミングは、そこを整えるきっかけとしてちょうどいいです。


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