結論から書きます。AIに文章を書かせると、実際とは違う数字を、自然な文章のまま書いてくることがあります。私は実際にやられました。本当は68本なのに「62本」と書かれて、読み返しても気づけませんでした。
それを止められたのは、実際に起きたことと実測値だけを書いた「台帳」を作り、AIにはそこに載っている数字しか使わせない、という運用に変えてからです。ただし、台帳を渡すだけでは止まりませんでした。「ネタが無ければ書かなくていい」と明記して、やっと止まりました。この記事は、その一部始終の実践ログです。
私は元調理師で、飲食の現場に10年いたあと、SNS運用代行のフリーランスとして独立しました。いまはThreadsとXに1日5本ずつ、AIが書いた投稿文を全自動で投稿する仕組みを動かしています。その運用の中で起きた話なので、机上の対策ではなく、実際に嘘の数字が出て、実際に止めた手順として読んでもらえたらと思います。
AIが書いた「62本」という嘘に気づくまで
まず、何が起きたかから書きます。私はThreadsに1日5本、7時・12時・17時・21時・23時に自動投稿する仕組みを動かしています。毎朝6時台にAIが投稿文をまとめて生成してGoogleドライブに保存し、投稿スクリプトはそれを読んで投げるだけ、という作りです。この自動化を組み始めたのは2026年6月で、まだ2ヶ月ほどしかやっていません。
投稿文の中には、自分の運用実績を振り返る内容も含まれます。そこでAIが、投稿本数を「62本」と書いてきました。実際の本数は68本です。6本ずれています。
問題は、この間違いに気づくのがとても難しいことでした。文章としてはまったく不自然ではないからです。「62本投稿した」という一文は、日本語として何の引っかかりもありません。数字が5桁も6桁もずれていれば違和感で気づけるかもしれませんが、68が62になっている程度のずれは、読んだだけでは分かりません。自分の実績なのに、自分でも見過ごしていました。
一般に、AIが事実と異なる内容をもっともらしく生成してしまう現象はハルシネーションと呼ばれています。私が経験したのはまさにそれで、しかも厄介なのは、嘘が「それらしい」形で出てくることでした。明らかにおかしい嘘なら読めば分かります。読んでも分からない嘘が、いちばん怖いと思いました。
なぜ気づけないのか。「静かな失敗」は数字だけじゃなかった
この件で考えたのは、エラーが表に出ない失敗がいちばんこわい、ということです。実は同じ時期に、AIの嘘とは別の「静かな失敗」を立て続けに経験していました。
ひとつは、Xの自動投稿を組んだときの話です。タスクスケジューラー上では全部「準備完了」と表示されていたのに、実際は一度も動いていませんでした。原因は、登録スクリプトの変数名にPowerShellの予約語を使っていて、タスクに渡す引数が丸ごと空になっていたことです。エラーもログも残らないので、気づくのに時間がかかりました。
もうひとつは、日付を整える処理です。パソコンによって使える書き方と使えない書き方があるのを知らずに書いていて、機能がまるごと無言でスキップされていました。これもエラーは一切出ませんでした。
AIが書く間違った数字も、構造としてはこれらと同じだと思っています。画面上は正常に見える。出力は自然に読める。でも中身が違う。システムの失敗なら、少なくともログを仕込めば拾えます。でも文章の中の数字の間違いは、ログには出ません。読んだ人間が実測値を覚えていない限り、検知する手段がないのです。
だから私は、「AIの出力を毎回目視でチェックする」という対策はあきらめました。68本と62本の違いを毎朝見抜ける自信がなかったからです。チェックする側の私が信用できない以上、嘘が出てから見つけるのではなく、嘘の材料をそもそも渡さない方向で考えることにしました。
対策の第一歩。実測値だけを書いた台帳を作った

やったことは単純です。実際に起きたことと実測値だけを書いた台帳を作り、AIにはそこに載っている数字しか使わせないようにしました。
台帳に入れているのは、たとえばこういう類のものです。6月25日から7月27日までにThreadsへ87本を自動投稿して、その間フォロワーは0人のままだったこと。7月27日時点で数えた7月のビューは527、いいねは7、返信は0だったこと。スロット別の平均ビューは朝15.7・昼5.7・夜1.8で、朝がいちばん見られていたこと。7月14日にPCが落ちていて投稿が3件失敗したこと。こういう、自分で数えた数字と、実際に起きた出来事だけです。
逆に、台帳に入れないものも決めました。推測、見込み、「たぶんこうだったはず」という記憶頼りの数字は入れません。数えていないものは書かない。数えたものだけ書く。それだけのルールです。
ポイントは、AIに「正確に書いて」とお願いするのではなく、参照できる情報源を一つに絞ることだと思っています。「正確に」という指示は、AIにとって具体的な行動になりません。それよりも、「この台帳に載っている数字以外は書かない」という形で、使ってよい材料を物理的に制限するほうが確実でした。私の場合、投稿文の生成は毎朝6時台に自動で走るので、その生成時に台帳を渡す運用にしました。
うれしい副産物もありました。台帳を作る過程で、自分の数字を自分で数え直すことになります。週ごとの平均ビューが18.2、15.9、8.4、7.9、5.0と右肩下がりだったことや、68本のうち13本がビュー0か1だったことは、台帳を作らなければ直視していなかった数字です。AIの嘘を止めるために作った台帳が、結果的に自分の現状把握にもなりました。
台帳だけでは止まらなかった。指示同士の噛み合わせという盲点
ここからがこの記事でいちばん書きたかった部分です。台帳を足しただけでは、作り話は直りませんでした。
台帳を渡したあとも、AIはときどき無かったエピソードを書いてきました。原因を探っていくと、前から指示に書いてあった一文と噛み合っていないことが分かりました。私は投稿文の指示に「毎回、具体的な出来事を必ず入れる」と書いていたのです。抽象的な話ばかりの投稿より、具体的なしくじりを書いた投稿のほうが見られていた、という実感があったからです。
この指示と台帳ルールがぶつかると、何が起きるか。台帳のネタが尽きたとき、AIは「具体的な出来事を必ず入れる」ほうを守ろうとして、出来事を作るのです。台帳に無い数字は書くな、でも具体的な出来事は必ず入れろ。この二つを同時に満たす手段が無くなった瞬間、AIは創作で埋めました。
直し方は、拍子抜けするほど簡単でした。「無ければ書かなくていい」と言い直しただけです。具体的な出来事は、台帳にあれば入れる。無ければ入れない。この逃げ道を明示して、やっと作り話が止まりました。
ここから学んだのは、AIの嘘は「知識が足りないから出る」だけではなく、「矛盾した指示を両方守ろうとして出る」場合がある、ということです。台帳という情報源をどれだけ整備しても、指示の側に「必ず〜する」という逃げ道のない要求が残っていると、AIは要求を満たすために事実のほうを曲げます。嘘を止めたいなら、材料を絞るのと同時に、書けないときに書かない自由を与える必要がありました。
いまの運用と、この方式でどこまで信用できるか
現在の運用をまとめておきます。毎朝6時台にAIが投稿文をまとめて生成し、Googleドライブにテキストで保存します。生成時に参照させるのは台帳だけで、載っていない数字は使わせません。具体的な出来事は、台帳にあれば入れる、無ければ入れない。ThreadsとXにそれぞれ1日5本、Windowsのタスクスケジューラーから投稿し、失敗したらログに残ってDiscordに通知が飛びます。
費用の面では、XのAPI利用料が1日5本の投稿で月350円ほど、ThreadsのAPIは無料、タスクスケジューラーはWindows標準機能なので0円です。台帳方式そのものに追加費用はかかっていません。テキストファイルを一つ増やしただけです。なお、私が実際に使ったことがあるAIはChatGPT・Claude・Geminiで、最初に触ったのはChatGPTでした。当時は精度が期待していたほどではなく、最初からうまく使えていたわけではありません。
この方式の限界も正直に書いておきます。まず、台帳自体が間違っていたら、AIは間違った数字を堂々と書きます。台帳の数字は自分で数えるしかなく、そこは自動化できていません。次に、この方式で止められるのは「数字と出来事の捏造」であって、解釈のずれや言い過ぎまでは防げません。生成された文章を私がまったく読まなくていい、という状態にはなっていません。
そして、これがいちばん大事なところですが、嘘を止めても成果が出るわけではありません。私のThreadsは、2026年7月に82本投稿して合計ビュー582、いいね8、平均ビュー7.1でした。8月4日までの7日間では24本投稿して合計ビュー120、いいね1、返信0です。ビューが0か1のままの投稿も、7月は18本ありました。台帳方式は投稿の中身を正直にしてくれましたが、届く力は別の問題として残っています。自動投稿は続ける力はくれるけれど、届く力は別物だった、というのがいまの実感です。
これからAIに数字を書かせる人へ。手順の再現メモ

最後に、私がやった手順をそのまま書き出しておきます。特別なツールは使っていません。テキストファイルと、指示文の書き直しだけです。
最初にやるのは、実測値の棚卸しです。自分の数字を、記憶ではなく記録から拾い直します。私の場合は投稿の自動集計を週次・月次でDiscordに飛ばしているので、そこから数字を写しました。数えていない数字は台帳に入れない、というのを徹底します。
次に、AIへの指示を「台帳に載っている数字と出来事だけを使う」に変えます。そして既存の指示文を全部読み返して、「必ず〜を入れる」という形の要求を探します。そこに逃げ道が無いと、材料が尽きたときにAIは作り話で埋めます。「無ければ書かなくていい」を添えるだけで挙動が変わったのは、私にとって大きな発見でした。
それでも完全にゼロになる保証はない、という前提は捨てないほうがいいと思います。一般に、ハルシネーションを完全に防ぐ方法は無いと言われています。私にできたのは、嘘の出る経路を二つ潰したところまでです。それでも、68本が62本になるような「読んでも気づけない嘘」が出なくなっただけで、自分の発信への信頼はだいぶ変わりました。数字を扱う発信をAIに任せるなら、台帳と逃げ道、この二つはセットで用意することをおすすめします。
台帳を作ったあとに残った、いちばん面倒な仕事
台帳方式でAIの嘘は止まりましたが、代わりにひとつ、面倒な仕事が自分の手元に残りました。台帳に載せる数字を、毎回自分で数えるという作業です。ここだけは今も自動化できていません。
私は週次・月次で自分の投稿を自動集計して、Discordにレポートが飛ぶようにしています。そこから数字を写せば台帳は埋まります。ただ、写す作業そのものは私がやっていて、投稿の失敗や欠測があった日はレポートの数字と実感が食い違うこともあります。
数えるまで、自分の現状を知らなかった
面倒ではありますが、この作業には別の効き目がありました。数えるまで、私は自分の数字をほとんど把握していませんでした。2026年8月4日までの7日間で、Threadsに24本投稿して合計ビュー120・いいね1・返信0。同じ週のスロット別平均ビューは朝6.0・昼6.6・夜2.4でした。
この週は、ビューが0か1のままだった投稿が8本ありました。7月は18本です。数えなければ「なんとなく反応が薄い」で終わっていた話が、本数として目の前に出てきます。台帳はAIのためのものだったはずが、いつのまにか自分に事実を突きつける装置になりました。
自動化を作っているのに、手を動かしている
正直に書くと、ここは今の自分の課題でもあります。自動化を作っているのに、結局そのつど自分の手を動かしてしまっているという感覚が、ずっとあります。投稿は全自動で回っているのに、その燃料になる台帳は手作業で補給している、という状態です。
それでも、この一手間を残しておく判断は今のところ変えていません。台帳自体が間違っていたら、AIは間違った数字を堂々と書きます。自動集計の数字をそのまま流し込む形にしてしまうと、集計側が静かに壊れたときに気づけません。エラーが表に出ない失敗がいちばんこわい、というのは、数字を扱う場所ほど当てはまると思っています。
いま手作業で残しているもの
- Discordに飛んでくる週次・月次レポートから、台帳へ数字を書き写す作業
- 数えていない数字を台帳に入れないかどうかの判断
- 生成された文章を自分で読むこと(解釈のずれや言い過ぎは台帳では防げないため)
この三つを手放せる形が作れているかというと、まだできていません。私の自社の収益はまだ立っていない状態で、業務委託の仕事量も多く、ここに時間をかけ続けるのが正解なのかは自分でも分かっていません。ただ、数字を扱う発信をする以上、最後に台帳を保証しているのは自分だ、という前提だけは持っておきたいと思っています。
まとめ

- AIは実際と違う数字(本当は68本なのに62本)を自然な文章で書いてくるので、読んだだけでは気づけない。
- 目視チェックに頼らず、実際に起きたことと実測値だけを書いた台帳を作り、載っている数字しか使わせないようにした。
- 台帳だけでは止まらなかった。「毎回、具体的な出来事を必ず入れる」という既存の指示と噛み合わず、ネタが尽きると作り話をした。
- 「無ければ書かなくていい」と逃げ道を明示して、やっと止まった。嘘は矛盾した指示からも生まれる。
- 台帳が間違っていれば嘘は防げないし、嘘を止めても届く力は別問題。2026年7月のThreadsは82本投稿して平均ビュー7.1という現状も、台帳のおかげで直視できている。


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