副業の収入がある年に、確定申告が必要かどうか。必要だとして、何をどの順番でやるのか。この記事では、その2つを整理します。あわせて、私自身が初めての確定申告でどこでつまずいたかも正直に書きます。
書いているのは、飲食の現場に10年いたあと、SNS運用代行のフリーランスとして独立した人間です。元調理師で、税の専門家ではありません。ですので、この記事は「制度の解説」というより「実際にやった人間が、事前に知っておきたかったこと」として読んでいただくのがちょうどいいと思います。個別の判断は必ず国税庁の公式情報か税務署、税理士に確認してください。この記事の中でも、公式の一次情報へのリンクをその都度置いています。
先に結論だけ書いておきます。
- 副業が給与以外の所得で、その所得が年20万円を超えるなら、確定申告が必要になるのが原則です(会社員で年末調整を受けている場合)。
- ただし「20万円」は売上ではなく所得(売上から経費を引いたあと)の話です。ここを取り違えると判断ごとずれます。
- 20万円以下でも、住民税の申告は別に必要になることがあります。「申告不要」は所得税の話であって、全部が免除されるわけではありません。
- 用意するものは、売上の記録・経費の記録・支払調書や取引先からの入金履歴・マイナンバー・口座情報。この4つか5つです。
- そして、いちばん大事なのは期中に記録をつけておくこと。私はここを怠って、1年分をまとめてやることになりました。
「20万円から」の正しい読み方
副業の確定申告でいちばん最初に引っかかるのが、この20万円という数字だと思います。私も最初、これを「年間20万円稼いだら」だと思っていました。実際は違います。
国税庁の説明では、給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる人の場合、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えるときに確定申告が必要、という整理になっています。詳しくは国税庁のページに書かれています(国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人)。
売上ではなく所得で見る
ここで言う「所得」は、入ってきたお金そのままではありません。売上から必要経費を引いたあとの金額です。
たとえば動画編集の副業で、1年間に25万円の報酬を受け取ったとします。この25万円だけを見ると「20万円を超えているから申告だ」となりますが、その仕事のために編集ソフトの月額を払っていたり、素材を買っていたりすれば、それは経費になります。仮に経費が7万円あれば、所得は18万円です。
私自身の話でいうと、独立初期の編集案件は1本4,000円から10,000円くらいでした。動画の尺で金額が変わります。仮に副業でこの単価の仕事を月に2本受けたとして、単純に足していくと年間で10万円台から20万円台になります。つまり、20万円というラインは「そこそこ頑張った副業」でごく普通にまたぐ数字です。遠い話ではありません。
20万円以下なら何もしなくていい、ではない
もうひとつ、見落としやすいところです。この20万円の話は所得税の確定申告についてのものです。住民税は別の制度で、所得税の確定申告をしない場合でも、お住まいの自治体に住民税の申告が必要になることがあります。
ここは自治体によって案内の書き方が違うので、「20万円以下だから何もしなくていい」と自己判断せず、お住まいの市区町村のサイトを一度見ておくのが確実です。総務省の住民税の説明ページ(総務省 個人住民税)も参考になります。
私は独立してからずっと確定申告をしているので、この「20万円以下だからしない」という分岐を自分で通ったことはありません。ただ、副業の段階で迷う人が多いところだというのは、まわりの話を聞いていても感じます。迷ったら申告しておくほうが、あとから困りません。
やることを順番に並べると、こうなります
手順そのものはシンプルです。難しいのは中身ではなく、量とタイミングのほうでした。
- 1年分の売上を集める(いつ・誰から・いくら入ったか)
- 1年分の経費を集める(いつ・何に・いくら払ったか)
- 帳簿に入力する
- 申告書を作る
- 提出して、納税するか還付を受ける
この5つです。書き出すと5行で終わってしまうのですが、実際にやると1と2と3が全体の9割を占めます。4と5は、そこまで終わっていればほぼ流れ作業です。
いつやるか
申告の期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までです。この期間や必要な手続きは国税庁のページで確認できます(国税庁 確定申告書等の作成・提出)。
ただ、この期間は「申告書を出す期間」であって、「準備を始める期間」ではありません。ここを勘違いすると、私と同じことになります。
私が初めての確定申告でつまずいた場所

正直に書きます。初めての確定申告でいちばん大変だったのは、内容の難しさではありませんでした。1年分の帳簿を一気につけたことです。
期中にためてしまって、最後にまとめて入力することになりました。何にいくら使ったか、どの仕事の入金がいつだったか、そういうものを1年ぶん遡って並べ直す作業です。制度が分からなくて詰まったのではなく、単純に量で詰まりました。
そのときどう思ったかというと、「これは毎年やる作業なのに、なぜ自分は12か月ぶんを1回にまとめたんだろう」ということでした。1か月ぶんずつなら30分で終わったはずのものを、まとめたせいで丸ごと重い作業に変えていた。自分でやったことなので、誰にも文句を言えません。
この経験から言えることは、ひとつだけです。確定申告でいちばん効くのは、申告期間に何をするかではなく、その前の12か月をどう過ごしたかです。申告期間にできることは、もう限られています。
青色申告を選んでいます
私は青色でやっています。青色申告には控除などの制度上のメリットがありますが、そのぶん帳簿のつけ方に条件があります。制度の中身は国税庁のページが正確です(国税庁 No.2070 青色申告制度)。
副業の段階でいきなり青色にすべきかどうかは、事業としての規模や、事前の届出が必要かどうかで変わります。ここは断定できません。ただ、青色を選ぶなら帳簿を期中につける前提になるので、私のような「最後にまとめて」というやり方とは相性が悪い、というのは実感として言えます。私は選んだあとで、そのことを身をもって知りました。
何を用意しておくか
準備するものは、そんなに多くありません。多くないのですが、集める作業に時間がかかります。
売上の記録
いつ、どこから、いくら入金があったか。クラウドソーシング経由なら管理画面に履歴が残りますし、直接契約なら自分が出した請求書と、口座の入金記録が手がかりになります。
私は請求書をフォルダにまとめて保存しています。特別なことはしていません。ただ、後からまとめて探すことを考えると、出したその場で決まった場所に置くというだけで、あとの自分がかなり楽になります。私が最初にやらなかったのは、まさにこれです。
経費の記録
いつ、何に、いくら払ったか。領収書やクレジットカードの明細が根拠になります。
何を経費に入れるかは、副業の中身によって変わります。動画編集ならソフトの月額や素材の購入費、SNS運用なら分析ツールや通信費といったところですが、どこまで入れられるかは個別の事情によるので、迷うものは税務署か税理士に確認するのが確実です。ここを記事で断定するわけにはいきません。
マイナンバーと口座情報
申告書の提出時に必要になります。還付がある場合は振込先の口座も要ります。これは当日に用意しても間に合いますが、番号の確認書類が見当たらない、というのが地味に時間を食うので、先に手元に出しておくと楽です。
取引先からの書類
報酬から源泉徴収されている場合、支払調書が送られてくることがあります。ただし、支払調書は必ず発行されるものではありません。届かないこともあるので、届かなかったときのために自分の側で入金記録を持っておくのが前提です。
会計ソフトについて(私が使っているもの)

私が会計に使っているのは freee です。
正直に言うと、私は他社のソフトを使ったことがありません。マネーフォワードも弥生も触っていないので、「freeeがいちばん良い」という比較はできません。ここで比較記事のような書き方をすると、使っていないものを評価することになるので書きません。
書けるのは、自分が使っている理由だけです。私の場合、独立してからずっと freee で、乗り換える理由が特に出ていないので続けています。ソフトの優劣より、「どれでもいいから決めて、期中から入れ続ける」ほうが結果に効いたというのが、私の実感です。私は最初の年、ソフトはあったのに入力していませんでした。道具の問題ではなく、運用の問題だったということです。
これは自動化の仕事をしていても同じで、仕組みを用意したことと、それが実際に回っていることは別でした。用意しただけでは何も変わりません。会計ソフトはその典型だと思います。
費用について
料金プランは変わることがあるので、金額は書きません。2026年8月時点の情報として、最新のプランと料金は公式サイトでご確認ください。無料で試せる期間が用意されていることが多いので、確定申告の前に一度触ってみて、自分が続けられそうかを見るのが現実的だと思います。
確定申告を毎年の作業として続けるなら、期中から記録が溜まる形にしておくのがいちばん効きます。私が使っているのはクラウド会計の freee です。私自身は最初の年、ソフトを用意しただけで入力していなかったので、同じつまずき方をしないための道具として書いておきます。プランと料金は変わることがあるので、公式サイトで最新の内容をご確認ください。
副業と本業、どちらの立場で申告するか
ここも整理しておきます。会社員をしながら副業をしている場合と、独立して事業としてやっている場合では、申告の形が変わります。
会社員の場合、給与は勤務先の年末調整で処理されていて、そこに副業ぶんを上乗せする形で確定申告をすることになります。給与所得の源泉徴収票が必要です。
独立している場合は、そもそも年末調整がないので、すべて自分で申告します。私はこちらです。会社を辞めたあとは健康保険も自分で切り替えることになって、私は任意継続ではなく国民健康保険を選びました。この手の「会社がやってくれていたこと」が一気に自分の作業になるのが、独立して最初の年のいちばんの負荷です。確定申告はそのうちのひとつでしかありません。
副業の段階で確定申告を一度でも経験しておくと、その後独立するときに、この負荷がひとつ減ります。副業のうちに通っておく価値は、税金の話というより「独立の予行演習」としてある、というのが私の見方です。
私がいま、副業をしている人に伝えたいこと

制度の話ではなく、進め方の話をいくつか書いておきます。
記録は月に一度、決まったタイミングで
これは私の失敗の裏返しです。1年ぶんをまとめてやると、単純に量で潰れます。月に一度、30分でいいので、その月の売上と経費を入れる時間を取っておく。それだけで、翌年の2月がまったく別物になります。
私は自動化の仕組みをいくつか作っていますが、そこで学んだのも同じことでした。毎日少しずつ動くものは続きますが、まとめてやろうとすると、そのタイミングでできなかった時点で止まります。会計も構造としては同じです。
売上が小さいうちに一度通しておく
金額が小さいうちの申告は、間違えても影響が小さいですし、作業量も少ないです。副業で年20万円前後という規模なら、集める記録も多くありません。規模が大きくなってから初めてやると、覚えることと量が同時に来ます。私はまさにその形で、独立した年に初めて確定申告をしました。
分からないことは、記事ではなく公式か人に聞く
これはこの記事自体への注釈でもあります。税の判断は、その人の収入の構成や状況によって変わります。ネットの記事は「何を調べればいいか」までは示せますが、「あなたの場合はこうです」までは示せません。私も専門家ではないので、ここは正直に書いておきます。
税務署は確定申告の時期に相談窓口を設けていますし、国税庁のサイトには税目ごとの説明がまとまっています(国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問))。まず公式を見て、それでも自分のケースが判断できなければ人に聞く。この順番がいちばん確実です。
まとめ
この記事の内容を、もう一度短くまとめます。
- 会社員で年末調整を受けている場合、給与以外の所得が年20万円を超えるなら確定申告が必要になるのが原則です。売上ではなく、経費を引いたあとの金額で見ます。
- 20万円以下でも住民税の申告が別に必要になることがあります。自治体のサイトを一度確認してください。
- 手順は「売上を集める・経費を集める・帳簿に入れる・申告書を作る・提出する」の5つ。重いのは最初の3つです。
- 用意するのは、売上の記録・経費の記録・マイナンバー・口座情報・(あれば)源泉徴収票や支払調書。
- いちばん効くのは、申告期間の過ごし方ではなく、その前の12か月の記録の取り方です。
私は初めての年に、1年分の帳簿を最後にまとめてつけました。制度が難しかったのではなく、自分でためた量に潰れただけです。あのとき本当に必要だったのは、知識ではなく、月に一度30分の習慣でした。
副業を始めたばかりの方が、同じつまずき方をしなくて済むように、この記事がひとつの参考になれば嬉しいです。なお、繰り返しになりますが、個別の判断は国税庁の公式情報か、税務署・税理士にご確認ください。


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