先に結論を書きます。フリーランスの単価は「相手がいくらなら払ってくれそうか」から決めると苦しくなります。決める順番は逆で、まず「自分がその金額で続けられるか」を時給に換算して確かめて、下回るラインを先に作っておく。金額の交渉が得意になる必要はなくて、譲れない下限を自分の中に持っておくだけで、消耗の仕方がかなり変わります。
偉そうに書きましたが、私はこの逆を全部やった側です。独立初期、動画編集の案件は1本4,000円から10,000円、コンサルは1本3,000円で受けていました。時給に換算すると安かった。しかも安くなった理由は、相場を知らなかったからではなく、自信がなくて自分から金額を下げていたからでした。
この記事では、私が実際に受けていた単価と、安く受け続けて何が起きたか、そこから考えた単価の決め方を書きます。うまくいった話だけではなく、いまも悩んでいる部分も同じ密度で書きます。
私が最初に受けていた単価
私は元調理師で、飲食の現場に10年いました。そこから動画編集スクールに約70万円・6ヶ月通って、SNS運用代行のフリーランスとして独立しています。独立して最初の仕事は、クラウドソーシングでもらった動画編集の案件でした。
独立初期の編集案件は、1本4,000円から10,000円くらい。動画の尺によって金額が変わりました。ココナラではコンサルの案件を10件ほどもらって、こちらは1本3,000円でした。
初めて報酬を受け取ったとき、正直に書くと、うれしさより先に「これで生きていける気がしない」と思いました。実際、独立してから半年くらいは無収入で、そのあとの半年くらいも収入は一桁万円台。その間はアルバイトをしながら食いつないでいました。
スクール代の70万円を回収するどころの話ではありません。収入が無いまま費用だけが出ていく時期があって、そのあとにようやく届いた報酬が数千円。仕事が取れないので、ココナラでコンサルをやったり、YouTubeをやったり、クラウドソーシングをやったり、思いつくものは毎日なにかしら試していました。
この時期を振り返って思うのは、単価が安かったこと自体より、「なぜその金額で受けたのか」を自分で説明できなかったことが問題だった、ということです。ここから先は、その話をします。
安くなった本当の理由は、相場を知らなかったからではない
単価の話になると、一般に「まず相場を調べましょう」と言われます。それ自体は間違っていないと思います。ただ、私の場合、金額が安くなった一番の原因は相場の知識ではありませんでした。
私は昔からテキストでのやり取りが苦手で、初対面の相手とオンラインで話すと、人見知りと自信のなさが前面に出てしまいます。自分でも分かっています。そして金額を出す場面では、その自信のなさがそのまま数字に出ました。相手に何か言われる前に、自分から金額を下げていたんです。
断られるのが怖いから、先回りして譲る。値下げを要求されたわけでもないのに、「このくらいなら断られないだろう」という金額を自分で作ってしまう。こうなると、相場をいくら調べても意味がありません。知識として適正価格を知っていても、提示する瞬間に自分で割ってしまうからです。
似た構造の失敗がもうひとつあります。提案資料を見てもらえたのに、そのあとの連絡が一切来なくなったことがありました。こちらからリマインドする勇気がなくて、そのまま終わりました。金額を下げるのも、リマインドできないのも、根っこは同じで、相手の反応が怖いという一点です。
だから、単価で苦しんでいる人に「強気に交渉しましょう」と言うのは、あまり意味がないと私は思っています。性格は急に変わりません。変えられるのは性格ではなく、金額を決める基準を、相手の顔色ではなく自分の側に置くことです。その基準づくりが、次の時給換算の話になります。
時給に換算すると、単価の見え方が変わる

1本3,000円のコンサルは、金額だけ見れば「安いけど、まあ1件だし」と思えてしまいます。でも時給に換算すると、安さの意味が変わりました。1件のコンサルには、本番の時間だけでなく、事前のやり取りや準備の時間がかかります。それを全部足してから3,000円を割ると、明らかに安かった。
編集案件も同じです。私の場合、金額は動画の尺で変わりましたが、かかる時間も尺で変わります。つまり「1本いくら」という見た目の数字は、実際の労働の重さをほとんど表していません。単価は「1本の金額」ではなく「その1本に何時間かかるか」とセットで初めて意味を持ちます。
見積もりに入れ忘れやすい時間
時給換算をするとき、作業時間だけを数えると実態より高く見えてしまいます。一般に、次のような時間が抜けやすいと言われますし、私自身も抜けていました。
- クライアントとのやり取りにかかる時間(メッセージの往復、打ち合わせ)
- 修正対応の時間
- 着手前の準備やリサーチの時間
- 請求や納品まわりの事務の時間
これらを全部足した時間で報酬を割ったものが、実際の時給です。私はこの計算を独立初期にやって、「これで生きていける気がしない」という最初の直感が数字として裏付けられました。感覚ではなく数字で見えると、少なくとも「この金額のまま件数だけ増やしても解決しない」ということは分かります。
下限のラインを先に作っておく
そのうえで、「この時給を下回るなら受けない」というラインを先に決めておきます。ラインの具体的な金額は人によって違うので、ここに正解の数字は書きません。生活費と稼働できる時間から逆算すれば、自分の数字が出ます。
大事なのは、このラインを案件の話が来る前に作っておくことです。目の前に案件があると、私のような性格の人間は必ず「でも断ったら次が無いかも」と考えて、その場でラインを動かします。先に決めてあれば、交渉が得意でなくても、少なくとも自分から下げる幅には歯止めがかかります。
安く受けること自体は、悪ではなかった
ここまで書いておいてなんですが、安く受けたことが全部失敗だったとは思っていません。ココナラの10件のコンサルは、時給換算すると安かったけれど、実績にはなりました。実績がゼロの時期に、実績と引き換えに安く受けるのは、選択としてあり得ると思います。
問題は、安く受ける理由が「実績のため」から「自信がないから」にすり替わったまま続くことです。前者は交換です。安さと引き換えに、実績という具体的なものを受け取っている。後者は交換ではなく、ただの消耗です。何とも引き換えになっていません。
見分け方はシンプルで、「この案件を安く受ける理由を、金額以外の言葉で言えるか」だと思っています。「実績が欲しい」「この分野の経験を積みたい」と言えるなら交換です。「断られたくないから」しか出てこないなら、それは私が陥っていた状態です。
もうひとつ、自分の過去と重なる話を書きます。私が飲食の仕事を辞めようと思った理由のひとつは、頑張っても給与や待遇が変わらない、という事実でした。社長とは価値観が合わないとずっと思っていました。それが嫌で独立したのに、独立してからの私は、自分で自分の単価を下げていました。変わらない状況を作っていたのが、今度は自分自身だったわけです。これに気づいたときは、けっこうこたえました。
いまも単価で悩んでいる、という現在地

この記事を「単価の悩みを解決した人」の記事だと思われたくないので、いまの状況も書いておきます。2026年8月時点で、私はいまも単価と利益のバランスで悩んでいます。
いまやっている業務委託の仕事は、仕事量が多くて大変なわりに、利益は低いです。自社の収益もまだ立っていません。AIで自分の作業を自動化して時間を作ろうとしていますが、結局そのつど自分の手を動かしてしまっている場面もあります。
それでも、独立初期と違う点がひとつあります。初期の私は、安い単価を「仕方ないもの」として受け取るだけで、安さの中身を数字で見ていませんでした。いまは、時間と金額を並べて「この仕事は量のわりに利益が低い」と自分で言えます。悩みが消えたわけではなく、悩みの解像度が上がった、というのが正確なところです。
解像度が上がると、次の一手が「もっと頑張る」以外になります。単価が低いのか、かかる時間が長すぎるのか、案件の種類を変えるべきなのか、切り分けて考えられる。フリーランスはメンタルが不安定になりやすいし、将来も不安です。だからこそ、感覚ではなく数字で現状を見られることは、精神的な支えとしても大きいと感じています。
金額の話が苦手なら、間に人を挟む選択肢もある
最後に、私と同じように金額の話そのものが苦手な人へ。自分で交渉しない、という選択肢もあります。
一般に、フリーランス向けのエージェントは、案件の紹介と条件面の調整を間に入ってやってくれると言われています。単価の提示や交渉を自分の口でやらなくていいのは、私のように自信のなさが金額に出てしまうタイプには、構造的に合っているはずです。仲介の分の手数料がかかるのが普通なので、そこは条件を確認する必要があります。
ひとつだけ注意点を書くと、交渉を人に任せても、下限のラインだけは自分で持っておく必要があります。自分の生活費と稼働時間から出した「これを下回ったら続かない」という数字は、他人には決められません。ラインを持たずに紹介された案件を受け続けると、交渉の窓口が変わっただけで、安く受けて消耗する構造は変わらないからです。
直接営業でもエージェント経由でも、順番は同じです。先に自分の数字を作る。それから案件の話をする。私が独立初期に持っていなかったのは、営業力でも交渉術でもなく、この順番でした。
単価を上げる以外に、かかる時間を減らすという道がある

時給は報酬を時間で割った数字なので、上げ方は理屈のうえで二つあります。分子である単価を上げるか、分母である時間を減らすか。金額の話が苦手な私にとって、後者のほうが先に手をつけられる場所でした。
先に断っておくと、ここで書くのはクライアント案件の作業そのものを自動化した話ではありません。まずは自分の発信で試しています。人の仕事でいきなり試して壊すのが怖かった、というのが正直な理由です。
実際に組んで動かしているもの
2026年6月から、Threadsに1日5本、7時・12時・17時・21時・23時の全自動投稿を動かしています。Windowsのタスクスケジューラーとプログラムを組み合わせてAPIを直接叩く作りで、Xも同じ時間・同じ構成で2026年8月4日に動かし始めました。毎朝6時台にAIが投稿文をまとめて生成してGoogleドライブに保存し、投稿スクリプトはそれを読んで投げるだけです。
かかっている費用は、XのAPI利用料が1日5本の投稿で月350円ほど。ThreadsのAPIは無料で、タスクスケジューラーはWindowsの標準機能なので0円です。投稿が失敗したらログに残り、Discordに通知が飛ぶようにもしています。
ただし、自動化は黙って止まる
作れば時間が浮く、という単純な話ではまったくありませんでした。組んでから2ヶ月ほどの間に、こういう止まり方をしています。
- Xの自動投稿で、タスクは全部「準備完了」と表示されていたのに、実際は一度も動いていなかった。登録スクリプトの変数名にPowerShellの予約語を使っていて、タスクに渡す引数が丸ごと空になっていた
- 7月3日から5日まで、Threadsの投稿が1本も出ていなかった。早朝にPCがスリープしていて、6時の生成スクリプトが走れなかった
- note告知が一度も投稿されていない時期があった。告知文をスプレッドシートにだけ書き込んで、投稿スクリプトが読むドライブ側のファイルを更新していなかった
- 認証トークンのファイルにBOMが混ざっていて、投稿が丸ごと止まった。見た目は何も変わらないので、原因の特定に時間がかかった
共通しているのは、エラーが表に出ないまま失敗していることです。画面上は正常で、ログにも何も残らない。それ以来、タスクを登録したあとは「準備完了」の表示だけで安心せず、渡している引数が空になっていないかを毎回確かめるようにしています。
この点検と修理にかかった時間も、本来は時給の分母に入れるべき時間です。作った直後は、手でやっていたころより明らかに時間を食っている期間がありました。
それでも分母を触る価値はある、と思う理由
単価の交渉と違って、時間を減らす作業には相手がいません。断られることも、その場で値下げを求められることもなく、自分の手元だけで進められます。相手の反応が怖いという私の性格が、ここでは足を引っ張らないのが大きい。
一方で、限界もはっきりありました。自動投稿は「続ける力」はくれましたが「届く力」は別物です。6月25日から7月27日までに87本を自動投稿しましたが、その間フォロワーは0人のままでした。時間が浮くことと、それが売上に変わることは、まったく別の話です。
実際、自動化を作っているのに、結局そのつど自分の手を動かしてしまっている場面もまだ残っています。だから、時間を減らす動きは下限ラインの代わりにはなりません。下限を決めたうえで、その下限に届かない案件を「もっと速くやる」で埋めようとしないこと。分母を削る努力は、単価の低さを我慢するための道具ではなく、続けられる仕事の量を増やすための道具だと考えています。
単価をどう見るかという話は、学ぶためにかけた費用をどう回収するかという話と裏表です。私が払った70万円を「編集何本ぶんか」に直して考えた話は動画編集スクールの費用相場と、元を取るための考え方に書いています。
まとめ
- 単価は「相手がいくら払うか」ではなく「自分がその金額で続けられるか」から決める。
- 私の独立初期は編集1本4,000円〜10,000円、コンサル1本3,000円。時給換算すると安く、半年は無収入、次の半年も一桁万円台だった。
- 安くなった原因は相場の知識不足ではなく、自信のなさから自分で金額を下げていたこと。
- 時給換算には、やり取り・修正・準備・事務の時間まで含める。見た目の「1本いくら」は実態を表さない。
- 「この時給を下回るなら受けない」という下限を、案件の話が来る前に決めておく。
- 実績と引き換えに安く受けるのはあり。ただし理由を金額以外の言葉で言えるかを確かめる。
- 交渉が苦手ならエージェントを挟む選択肢もあるが、下限のラインだけは自分で持つ。


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