この記事では、私が個人事業主として実際に「経費に入れているもの」「入れるかどうか迷ったもの」「入れないと決めて外したもの」を、判断した理由ごとに書いていきます。金額の目安ではなく、迷ったときに何を基準にして決めたかのほうを中心に置きます。
書いているのは「AIフリーランスラボ」のさとりと申します。もともと調理師として飲食の現場に10年いて、そこからSNS運用代行のフリーランスとして独立しました。営業が苦手で、その苦手を埋めるために自動化を作りはじめた在宅ワーカーです。いまは業務委託の仕事をしながら、自社の事業を立ち上げている最中で、正直まだ自社の収益は立っていません。だからこそ「これは経費になるのか」で毎回止まる側の人間です。
先に結論を書きます。私が使っている基準はひとつだけで、「その支出が売上に結びついている道筋を、自分の言葉で説明できるかどうか」です。説明できるものは入れる。説明が途中で怪しくなるものは、金額が大きくても外す。迷ったら外す。これだけです。
先にお断りしておくと、私は税理士ではありません。ここに書くのは私が自分の帳簿でどう扱っているかという話で、正解の提示ではありません。経費として認められるかどうかは事業の実態によって変わりますし、判断に不安があるものは税務署や税理士に確認するのが確実です。この記事は「他の人はどこで線を引いているのか」を知りたい方向けの、ひとつの実例として読んでいただければと思います。
そもそも私が「どこまで」で止まるようになった理由
飲食で働いていたころは、経費という言葉を自分ごととして考えたことがありませんでした。会社が払うものと自分が払うものがはっきり分かれていて、その線を自分で引く必要がなかったからです。当時は昼に出勤して真夜中に退勤する生活で、休みの日には体力が残らず、何もできずに終わっていました。お金の管理どころではなかった、というのが正直なところです。
独立して最初に困ったのは、その線が誰も引いてくれないことでした。私の場合、独立するために動画編集のスクールに入っていて、費用は約70万円、期間は6ヶ月でした。この70万円をどう扱うのかという話から、いきなり始まったわけです。しかもそのときは収入が無いまま費用だけが出ていく時期で、独立してから半年くらいは無収入、そのあとの半年くらいも収入は一桁万円台でした。その間はアルバイトをしながら食いつないでいました。
収入が無い状態で支出だけがある。そうすると、心理的には「少しでも多く経費に入れたい」という方向に引っぱられます。私も引っぱられました。でも同時に、後から説明を求められたときに答えられない支出を積むのは、精神的にかなり重いということも分かってきました。フリーランスは元々メンタルが不安定になりやすいですし、将来も不安です。そこに「あの処理は大丈夫だったろうか」という不安を自分から足す必要はない、と思うようになりました。
だから私の基準は、節税額の最大化ではなく、説明できる範囲に収めることに寄っています。攻めた処理をしていないぶん、取りこぼしはあると思います。それでも、この線引きにしてから帳簿を触るときの気分がかなり楽になりました。
迷わず入れているもの
まず、私が考えるまでもなく経費として処理しているものから書きます。共通しているのは、それが無いと今の仕事が物理的に成立しないという点です。
- XのAPI利用料。1日5本の自動投稿を回していて、月350円ほどかかっています。これは自社の発信を回すための直接の費用なので、迷いはありません。
- ネット回線。在宅で働いている以上、これが無いと1日も仕事になりません。ビッグローブ光を使っていて、速度は250〜350Mbpsくらいです。ただしこれは後述する「家事按分」の対象で、全額ではありません。
- 仕事に使っているソフトやツールの利用料。編集や運用に使うもの、AIに文章を生成させるためのものが該当します。
- サイトの運営にかかる費用。2026年8月6日に自社サイトを公開しましたが、こういうものにかかる費用は事業のためのものだと説明できます。
逆に言うと、この「無いと成立しない」に当てはまらないものが、全部そのあとの迷いどころになります。ちなみにThreadsのAPIは無料ですし、自動投稿の実行に使っているタスクスケジューラーはWindowsの標準機能なので0円です。経費の話をするとき、意外とこの「かかっていない費用」を把握しておくのも大事だと感じます。何にいくらかかっているかを正確に知らないまま「だいたいこれくらい」で処理すると、後から自分で説明できなくなるからです。
いちばん迷ったのは、独立前に払った70万円のスクール費用

私にとって最大の迷いどころは、動画編集スクールに払った約70万円でした。金額が大きいうえに、支払ったのが独立する前だったからです。
迷った理由は3つありました。1つめは、事業を始める前の支出であること。2つめは、そのスクールで学んだ動画編集が、いまのメインの仕事ではなくSNS運用代行に移っていること。3つめは、これがいちばん引っかかったのですが、そもそもこの70万円が事業として元を取れたのか自分でも怪しかったことです。
数字にすると分かりやすくて、独立初期の編集案件は1本4,000円から10,000円くらいでした。動画の尺によって金額が変わります。ということは、70万円は70本から175本ぶんです。私はこの割り算を、払う前に一度もしていませんでした。しかもいま調べると、同じような講座が8万円から10万円で売られていたりします(2026年8月時点で見かけた範囲の目安です。金額は時期やキャンペーンで変わるので、最新は各公式サイトでご確認ください)。
この「元が取れたのか」という感情と、経費として妥当かどうかの判断は、本当は別の話です。頭では分かっているのですが、実際に帳簿の前に座ると混ざります。損した気持ちがあるぶん、経費に入れて少しでも取り返したい、という気持ちが出てくる。これは自分でも危ないなと思いました。
最終的に私が置いた基準は、感情ではなく時期と用途で説明できるかどうかでした。開業前の支出をどう扱うかにはルールがあるので、そこは自己判断で押し切らず、開業日との関係で整理して処理しています。金額が大きいものほど、自分の気分ではなく手続きの側に判断を預けたほうがいいというのが、このときの学びです。もし同じように高額のスクール費用を抱えている方がいたら、感情の整理と経費の整理は分けて、後者は専門家に確認したほうが早いと思います。
家事按分で線を引いたもの
在宅で働いていると、仕事とプライベートで同じものを使うことになります。ここが個人事業主の経費でいちばん判断が要る部分だと感じています。私の場合、対象になるのは主に次のあたりです。
- ネット回線。仕事にも使うし、仕事以外にも使います。
- 電気代。パソコンを長時間動かしているので、無関係ではありません。
- 家賃。作業している場所は家の中です。
これらを全額入れるのは、私の感覚では説明が持ちません。かといってゼロにするのも実態と違います。なので、事業に使っている割合を決めて、その割合ぶんだけを入れています。
割合をどう決めたかというと、後から自分で再現できる決め方にするという一点でした。たとえば「なんとなく半分」ではなく、作業している時間や使っている面積のように、聞かれたときに数え方を答えられる根拠を先に決める。そうすると、翌月も翌年も同じ決め方で処理できます。逆に、その場の気分で割合を決めてしまうと、翌年の自分が「なぜこの数字だったのか」を説明できなくなります。実際、私は自動化の設定でこれをやって痛い目を見たことがあるので、帳簿でも同じことをしないようにしています。
ここでひとつ気づいたことがあります。按分の割合は、生活が変わったら見直さないと実態とずれていくということです。私は独立してからしばらく、アルバイトと並行して働いていました。そのときと、いまのように在宅で1日中パソコンに向かっている時期とでは、家で仕事をしている割合が違います。決めっぱなしにせず、年に一度は「いまもこの割合で説明できるか」を確認するようにしています。
入れるかどうかで長く迷って、結局入れなかったもの
ここが、この記事でいちばん書きたかった部分かもしれません。入れなかったものにも理由があります。
1つめは、仕事にも使うけれど買った動機が仕事ではなかったものです。私の作業環境には、仕事にしか使わないと言い切れないものがいくつかあります。たとえば周辺機器の類です。使ってはいるのですが、買ったときの動機が完全に事業だったかというと、正直そうとは言い切れないものがある。この「言い切れない」という感覚が出た時点で、私は外すことにしています。説明の途中で自分が口ごもるものは、たぶん説明できていないからです。
2つめは、事業と関係があると言えなくもないけれど、間に説明のステップが多すぎるものです。「これは情報収集になるから」「これは発信のネタになるから」と言い出すと、かなりの支出に理屈がつけられてしまいます。私は一度、その方向で考えてみたことがあるのですが、そうやって並べた理屈は自分でも薄いと感じました。売上までの道筋が2段も3段も飛ぶものは、外しています。
3つめは、記録が残っていないものです。これは判断以前の問題でした。領収書やレシートが無い、いつ何のために使ったかを思い出せない。この状態のものは、たとえ本当に事業のための支出だったとしても、私は入れないことにしました。実際にあったかどうかと、確かめられるかどうかは別だからです。
この3つめについては、最近まさに同じ構図でやらかしています。2026年8月12日、その日の夕方に公開される予定だった自分の記事を、公開の直前で止めました。モニターアームについて「実際に使っていて、もう元には戻れない」と書いてあったのに、自分が使っている道具を記録した台帳にアームが1行も無かったからです。確認したら、実際は4本使っていました。記事の中身は本当だったんです。
それでも止めたのは正しかったと思っています。というのも、根拠を確かめないままキーワードを登録するときの実体験欄に「実体験あり」と書いてしまっていて、そこから先の仕組みは全部それを本当のこととして扱っていたからです。同じ日に登録した別の行には、ちゃんと「持っていないので、いらなかった側で書く」と書いてありました。合っていたのは結果であって、確かめ方ではなかった。このときの感覚は、経費の判断とまったく同じだと思いました。「本当に使った」と「使ったと確かめられる」は別物で、帳簿で問われるのは後者のほうです。
数字を自分で確かめる癖がついたきっかけ

経費の話から少しずれるように見えるかもしれませんが、私が「記録が無いものは書かない・入れない」と決めた背景には、はっきりしたきっかけがあります。
自分の投稿文をAIに書かせていたとき、実際とは違う数字を書いてきたことがありました。本当は68本なのに62本と書いていて、しかも文章としては自然なので、読んでも気づけません。これは怖いなと思いました。悪意も故障もなく、ただ自然な文章として間違った数字が出てくる。
対策として、実際に起きたことと実測値だけを書いた台帳を作って、そこに載っている数字しか使わせないようにしました。ところが台帳を足しただけでは直らなかったんです。前から書いてあった「毎回、具体的な出来事を必ず入れる」という指示と噛み合わなくて、台帳のネタが尽きるとやっぱり作り話をしました。「無ければ書かなくていい」と言い直して、やっと止まりました。
この経験が、経費の考え方にもそのまま効いています。「埋めなければいけない」という前提があると、人は無いものを作ってしまうということです。経費も同じで、「もっと入れられるはずだ」という前提で帳簿を見はじめると、根拠の薄いものを入れる方向に手が動きます。だから私は、入れる欄を埋めることを目標にしないようにしました。無ければ空けておく。それだけです。
ついでに書いておくと、私は「エラーが出ない失敗」に何度もやられています。日付を整える処理で、パソコンによって使える書き方と使えない書き方があるのを知らずに書いて、機能がまるごと無言でスキップされていたことがありました。タスクスケジューラーの登録では、変数名にPowerShellの予約語を使っていたせいで引数が丸ごと空になり、画面上は全部「準備完了」と表示されているのに実際は一度も動いていなかった、ということもありました。エラーもログも残らないので、気づくのに時間がかかりました。
帳簿もこれに近いところがあると思っています。間違った処理をしても、その場では何も起きません。画面は普通に「準備完了」の顔をしています。だから、自分でチェックする仕組みを持っていないと気づけない。私が経費の判断を「説明できるか」で統一しているのは、これが自分でできる唯一のチェックだからです。
実際にやっている、迷ったときの手順
抽象的な基準だけだと使いにくいので、私が支出のたびに実際にやっている順番を書いておきます。特別なことはしていません。
- まず「これは何のために買ったか」を一文で書く。書けなければ、その時点で保留にします。書けないものは後からも書けません。
- その一文が、売上までつながっているか確認する。間に説明のステップが多すぎるものは外します。「情報収集のため」「ネタになるかもしれない」で止まるものは、私は入れません。
- 仕事以外にも使うものかどうかを見る。使うなら按分の対象にします。全額入れるか全額外すかの二択にしない、というのが大事でした。
- 記録があるか確認する。無ければ入れません。ここは感情を挟まないようにしています。
- 迷いが残ったら外す。私の場合、迷った時点でだいたい説明が弱いです。
この5つで判断がつかないものは、専門家に聞く候補として別に控えています。全部を自分で決めようとしないほうが、結果的に早いと感じています。
ツールに任せる部分と、任せない部分
私は自動化を作るのが好きなほうなので、帳簿もできるだけツールに寄せています。とはいえ、やってみて分かったのは、ツールが決めてくれるのは「分類」であって「判断」ではないということでした。
どの勘定科目に入れるか、いくらを按分するか、そういう処理はツールが助けてくれます。でも「そもそもこれを事業の支出として扱うか」は、最後まで自分が決めることになります。ここを勘違いすると、ツールに入力した時点で判断も済んだ気になってしまう。
私はこれを、自分の自動化で何度も経験しました。自動化を作っているのに、結局そのつど自分の手を動かしてしまっている、というのがいまの正直な状態です。自動投稿の仕組みを組んで、Threadsは1日5本、Xも同じ時間に1日5本を全自動で出していますが、それでも中身の判断は毎回自分に返ってきます。仕組みが担ってくれるのは「毎日欠かさず実行すること」であって、「何を出すか」ではないんです。
経費もまったく同じ構造でした。ツールは毎月の作業を軽くしてくれますが、線引きの責任までは引き取ってくれません。逆に言えば、線引きさえ自分の中で決まっていれば、あとの作業はかなり機械的にできます。私が基準をひとつに絞ったのは、判断の回数そのものを減らしたかったからでもあります。
1年やってみて、考え方が変わったところ

独立してしばらくは、経費を「取り戻す手段」だと思っていました。無収入の半年、そのあとの一桁万円台の半年を過ごしていると、どうしてもそう見えます。出ていくばかりの時期に、少しでも戻ってくるものがあるなら全部拾いたい、と思っていました。
いまは少し違う見え方をしています。経費を整理する作業は、自分の事業に何がいくらかかっているのかを把握する作業そのものだと思うようになりました。
たとえば私の自動化にかかっている費用は、XのAPI利用料が月350円ほどで、ThreadsのAPIは無料、タスクスケジューラーは0円です。この内訳をはっきり知っているから、「この仕組みは月350円でここまでやってくれている」と評価できます。逆に、業務委託の仕事については、仕事量が多くて大変なわりに利益が低いということも、数字を並べたことで見えてきました。経費を数えていなかったら、たぶん「なんとなく忙しい」で終わっていたと思います。
あの70万円についても同じです。70本から175本ぶんだった、という割り算をしたのは払ったずっと後でした。でもこの計算を一度したことで、いま何かに投資するかどうかを決めるときに、必ず「これは何本ぶんか」を先に出すようになりました。経費として処理する前に、その支出が事業にとって何なのかを考える癖がついた、という言い方のほうが近いかもしれません。
正直に書くと、いまも自社の収益は立っていません。自動化を作って、記事を書いて、サイトも公開しましたが、まだ収益は出ていない段階です。それでも帳簿だけは、後から自分で説明できる形で残しています。数字が動いていない時期こそ、記録の正確さは自分で守るしかないからです。
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まとめ|どこまで入れるかより、どう説明するか
ここまで書いてきたことを、あらためて整理します。
- 私が使っている基準は「売上に結びついている道筋を自分の言葉で説明できるか」のひとつだけです。
- 迷わず入れているのは、無いと仕事が成立しないもの。API利用料、ネット回線、仕事に使うツール類などです。
- いちばん迷ったのは、独立前に払った約70万円のスクール費用でした。損した気持ちと経費の判断が混ざるので、感情ではなく時期と用途で整理しました。
- 仕事とプライベートで共用するものは、全額か全額外すかの二択にせず、後から再現できる決め方で按分しています。
- 外したのは、買った動機が仕事だと言い切れないもの、売上まで説明のステップが多すぎるもの、そして記録が残っていないものです。
- 「本当に使った」と「使ったと確かめられる」は別物です。記事を1本公開直前で止めたときに、それを痛感しました。
ひとつだけ補足すると、ここに書いたのは全部、私が自分の帳簿でどうしているかという話です。経費として認められる範囲は事業の実態によって変わりますし、私の判断がそのまま他の方に当てはまるとは限りません。金額が大きいもの、開業前の支出、按分の割合など、判断に迷う部分は税務署や税理士に確認するのがいちばん確実です。私も、自分の5つの手順で決められなかったものは、聞く候補として別に控えています。
経費を考えることは、節税のテクニックというより、自分の事業の輪郭を自分で描く作業に近いと感じています。何にいくら使っていて、それが何のためだったのかを言葉にできる状態にしておく。それができていれば、たとえ収益がまだ立っていなくても、次に何を削って何に賭けるかの判断はできます。私はいまその段階にいます。
帳簿づけそのものが負担になっている場合は、会計ソフトを使って作業自体を軽くしてしまうのも手だと思います。判断は自分でするしかありませんが、記録と集計は任せられる部分です。開業届の作成から日々の記帳までまとめて扱えるサービスもあるので、まだ手作業でやっている方は一度見てみると、判断に使う時間を増やせるかもしれません。


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